カレントテラピー 35-11 サンプル

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20 Current Therapy 2017 Vol.35 No.111030Ⅰ 2型糖尿病治療薬としてのαグルコシダーゼ阻害薬の役割αグルコシダーゼ阻害薬(α-glucosidase inhibitor:α-GI)の特徴として単独での低血糖はほぼないこと,体重増加なく血糖を低下させること,腎機能低下の程度にかかわらず使用可能であること,また糖質吸収へのその作用は年齢を問わず,さらにずっと有効であることから糖尿病の,あるいはその発症危険性の高い患者への対応法のなかで,いつでもいつまでも使用継続可能である利点を有することなどが挙げられよう.またその腸管糖質吸収への作用はインスリンを介さないものであるため,いかなる耐糖能低下例へも効果が期待される.Ⅱ 糖尿病発症予防への効果薬剤選択の面から,本剤の最大の特徴はimpairedglucose tolerance(IGT)例への投与が可能になっているという点であろう.生活習慣への介入に加え,種々の薬物を利用してのIGTから糖尿病への移行の予防試験は古くから行われてきた.α -GIについては白人IGTを対象にしたChiassonらのStop to preventnoninsulin-dependent diabetes mellitus(STOPNIDDM)研究が端緒になっている1).平均3.3年の観察で糖尿病移行の割合は対照群の42%と比べてアカルボース300mg/日投与群では32%と25%有意に少なかったとされている.わが国でもKawamoriらによって日本人IGT例を対象にボグリボース0.6mg/日投与* 秋田赤十字病院代謝内科部長多彩な糖尿病治療薬をどのように使い分ける?αグルコシダーゼ阻害薬後藤 尚*2 型糖尿病治療薬として,スルホニル尿素(sulfonylurea:SU)剤とインスリン製剤そしてわが国ではごくわずかのビグアナイド(biguanide:BG)剤しか使用されてなかった90年代に,第4の薬剤群として微生物由来のアカルボースを皮切りにαグルコシダーゼ阻害薬(α- glucosidaseinhibitor:α- GI)が登場して四半世紀になる.当初は腸管からのブドウ糖吸収遅延により,食後の追加インスリンの適時分泌が不十分であるという2型糖尿病の特徴による食後血糖上昇を抑制するという役割だけが期待されていたが,やがて食後インスリンの総分泌過剰・インスリン抵抗状態の是正,impaired glucose tolerance(IGT)例への糖尿病発症予防,あるいは食後インクレチン分泌の調整すなわちインクレチン関連薬としての期待,さらには腸内細菌叢への効果を介して最近は消化管がんの発症・進展抑制への効果までもが研究され,息の長い糖尿病治療薬に進化した薬剤群である.その歴史を追いながら今後の糖尿病治療において本剤が発揮できる役割について考えてみたい.