カレントテラピー 35-10 サンプル

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カレントテラピー 35-10 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.10 65973ンターで出生し,新生児集中治療室(NICU)等で高度な医療を受けることで救命されることも多くなり,遺伝学的検査により,原疾患が明らかになる症例も増えてきている.さらに,虐待,溺水,事故,脳炎・脳症,代謝異常,腫瘍などの治療のために,小児集中治療室(PICU)等で高度な医療を受ける子どもも増えてきており,これらの子どもたちのなかからも,急性期の治療の後に,生命の維持,日々の生活のために,日常的に人工呼吸器をはじめとする医療機器や,口腔および気管切開カニューレから吸引などの医療的ケアが必要な子どもたち(医療的ケア児)が生まれてきている.さらに,慢性疾患の子どもたちが加齢に伴い,医療的ケアが必要となるケースもある.これらを背景として,小児では,高齢者に比較して,高度な医療的ケアが必要な在宅患者が多い4).2 重症心身障害児(重症児),超重症児,医療的ケア児(高度医療依存児)障害者とは,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)に加えて,障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)で,平成25年に難病が加えられ,平成28年には医療的ケア児が加えられた.また,障害児は,18歳未満であるものと定義されている.重症心身障害児(重症児)は,重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態であり,大島の分類で1~4の範囲とされ,医療的ケアについては考慮されていない.一方,超重症児は,医学的管理下に置かなければ,呼吸をすることも栄養を摂ることも困難な運動機能が,座位までの障害児で,必要な医学的処置のスコア25点以上の児とされている.一方,医療的ケア児のなかには,医学的管理に関しては超重症児と同等であるが,走ることも,話すこともできる子どももおり,従来の重症児や,超重症児を対象とした福祉制度では支援できない子どもも多く含まれていた.そこで,平成28年5月25日成立,6月3日公布・施行された障害者総合支援法改正法により新設された児童福祉法第56条の6第2項では,「地方公共団体は,人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児が,その心身の状況に応じた適切な保健,医療,福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう,保健,医療,福祉その他の各関連分野の支援を行う機関との連絡調整を行うための体制の整備に関し,必要な措置を講ずるように努めなければならない」と述べられ5),厚生労働省,内閣府,文部科学省の連名で各地方公共団体に通達がなされ,支援体制の構築が求められている6).3 医療的ケア児の現状小児では,NICU長期入院患者の増加により,急性期治療を必要とする妊婦や新生児が入院できないことが問題となり,解決策のひとつとして,小児在宅医療が注目されてきた経緯がある.しかし,医療的ケア児については全国的な調査もなく,その総数や実態を把握することも難しかった.平成28年度厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業「医療的ケア児に対する実態調査,医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究」で,厚生労働省の「社会医療診療行為別調査」から,平成27年度における医療的ケア児の数は1万7,078人で,平成17年度(9,403人)から大きく増加し,在宅人工呼吸を要する患者数は3,069人で,平成17年度(264人)と比べて約12倍に急増し,医療的ケア児の約2割が人工呼吸器を使用している実態(図1)が明らかになった7).平成27年度厚生労働省社会・援護局委託事業「在宅医療ケアが必要な子どもに関する調査」では,医療的ケア児の90%以上がNICU・ICUの入院経験があり,NICU等退院児の6割以上が吸引や経管栄養を必要としており,約2割が人工呼吸器管理を必要とするなど,特に高度な医療を必要としている実態が明らかになった.さらに,約6割が障害福祉サービス等を利用せずに家族の力だけでケアしており,主な介護者である母親は,十分な継続した睡眠時間を取れないだけでなく,長時間にわたる介護,見守りを強いられており,その負担感も大きい.また,育児や療育,在宅生活等の相談先として公的な相談機関が対応できておらず,社会として医療的ケア児とその家族を支援する仕組みが整備されていないことも問題である8).4 小児在宅患者に対する訪問診療,訪問看護の現状高度な医療を必要としている小児に対する訪問診療に関して,日医総研ワーキングペーパー「在宅医療を