カレントテラピー 35-10 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.10 63在宅医療の現況971今後の課題として,病院側としてはやはり退院調整部門の能力がカギである.もちろん在宅療養へ追い出すような誘導は論外であるが,早期の在宅医療への移行とともに緊急時の受け入れの調整も必要である.患者家族へ適切な在宅の医療資源の情報提供を行い,さらに病院医師・看護師へも在宅医療の情報提供と意識改革が必要なのではないであろうか.特に,病院から在宅医療への移行時は患者家族の不安もあり,患者・家族の気持ちに沿った,揺れ動く心情に対する柔軟な姿勢が求められる.また最近では外来治療からのシフトチェンジも問題であり,終末期あるいは移行期になったときに入院,施設,在宅医療の何を選択するかを病院側がしっかり認識するべきである.在宅医療側としては本人を含む家族へ今後起こり得る病状の変化,在宅でできることできない範囲の説明,在宅では病院と違い急変してもすぐに行けない可能性があること,休日・夜間の対応についての説明,また同居の家族だけでなく親族へも十分な理解が必要であり,もちろん医師間だけでなく多職種との情報の共有と連携が必要なのはいうまでもない.ICTの利用は有用であるが,やはり連絡がつくこと,最期まで向き合い看取ることが必要である.最後にわが国の在宅医療への課題で,今後多くの看取りを行うためには,「死に対する現状認識」:どこでどのように看取られているか,「意識改革」:死というものは皆にいずれ来ること,「情報収集」:誰が看取りのサポーターとなっているか.これらについては在宅医療に対する患者家族の十分な理解と国民への啓蒙が必要である.行政の医療認識のシフトチェンジ,いわゆる治す医療から支える医療への理解が今後の在宅看取り,在宅死への取り組みに必要であろうと考える.参考文献1)金涌佳雅,阿部伸幸,谷藤隆信ほか:東京都23区ごとの孤独死実態の地域格差に関する統計.厚生の指標 60:1-7,20132)清水恵子,塩野 寛,上園 崇:高齢者の孤独死の死因分析と予防対策内外因子,自殺,事故死の分析.大和証券ヘルス財団研業 25:16-22,20113)山崎健太郎,田宮菜奈子,松澤明美ほか:独居生活者および死後長時間経過事例にみる高齢者独立死の疫学的考察と山形県・東京都区部の地域差.法医の実際と研 52:227-235,20094)玉木一弘,横田卓史,小机敏昭ほか:地域包括システムにおける医師会の取り組みについて.都医雑誌 69:97-104,20165)田原順雄,渡辺 滋,椎名健一ほか:武蔵野市における在宅医療介護連携推進事業について─ICTを利活用した取り組みを中心に─.都医雑誌 69:112-115,20166)井尾和雄:在宅緩和ケア.癌の臨 63:141-150,20177)佐藤一樹,宮下光令,森田 達ほか:一般集団における終末期在宅療養の実現可能性の認識とその関連要因.PalliativeCare Res 2:101-111,20078)宮本圭子,中林伊世子,大西 史:在宅終末期を看取った家族へのアンケート調査─今後の取り組みに向けて.訪問看と介11:498-503,20069)荘司輝昭,片桐 淳,井尾和雄:在宅緩和ケアにおける病診連携の問題点について.都医雑誌 66:65-67,201310)昆 啓之,安達元明:終末期にある患者の療養の場を決定する要因.日公衛雑誌 44:339-345,199711)川越 厚:がん患者の在宅ホスピスケア.医学書院,東京,201312)杉琴さやこ,古賀友之,西垣千春:終末期医療における在宅療養の課題.社医研 27:9-16,200913)森田達也,白土明美:死亡直前と看取りのエビデンス.pp174-188,医学書院,東京,2015