カレントテラピー 35-10 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.10 61在宅医療の現況969えたいかも必ず聞くことにしている.癌終末期の場合,自宅で最期までを希望するのか,あるいはホスピスを考えているのかを問うのもこのタイミングであるが,大抵の場合面談に来た家族でさえも癌終末期であるにも関わらずそこまで認識して面談に来られるのはいまだ半数である.そのため必要に応じ,紹介状やお聞きした情報をもとにおおよその残された時間を説明して,その場である程度の考えをまとめていただき,介護不安やその他の要素を考慮しホスピスの相談も併せて進めるよう再度説明する.また,このとき必ず延命治療に対しての患者・家族の希望を聞き(たいていの場合は気管内挿管,心臓マッサージなどの延命処置は希望されないが),不必要な点滴をしないこと,苦痛には対処できること,麻薬の説明,呼吸困難の対応時には在宅酸素をすぐに導入できること,緊急時の対応(座薬の使用法なども含む),終末期となったとき救急車を呼ばないこと(心肺停止状態で救急車を呼ぶと警察対応となること),終末期の状況の説明などを十分行う.そして自宅に患者がいれば面談当日,あるいは患者退院日に初回訪問を行っている.そのため,退院後短期間での看取りを可能としており,極端にいえば退院日での看取りも可能である.このときの家族心情として,短期間でも家に連れて帰れたことの達成感がほとんどであり,そのまま病院へ入院させておけばよかったという声は皆無であった.しかしながら,本来退院日当日に看取ることは,病院からの移行が遅すぎることも意味している.在宅で終末期を看取った家族へのアンケート調査において,在宅療養期間の検討で「1~6カ月未満」を家族が一番多く望んでいると報告があるが8),当院では癌終末期患者の平均在院日数は約100日前後で,もちろん長期に在宅療養を行えている患者もいるが,約4割の癌終末期患者が在宅医療に移行後1カ月未満の短期間で最期を迎えている9)ため,病院から在宅療養への移行時期は今後の課題である.この移行時期については終末期にあるがん患者の療養の場を決定する要因のひとつに,病院でのモルヒネの用量が多いことが阻害因子として挙げられている10).当院紹介患者においては,在院日数1カ月未満のがん患者の約5割が紹介先病院で麻薬は使用されておらず,当院で麻薬使用開始となっており,この報告とは異なるものである.さて本題に戻るが,訪問診療を行いながら病状が悪化した場合,その間に病状の変化の説明,今後の状態の説明をご家族に行うとともに,訪問診療に関わっている多職種(訪問看護師,薬剤師,ケアマネジャーなど)とも情報共有の連携を行うのは必須である11),12).当院では訪問地域周辺の多数の訪問看護ステーション,訪問薬局と連携しており,ICTのみならず事細かいニュアンスが必要な場合,直接の電話でのやり取りで情報共有を図り対応をしている.特に在宅看取りを行ううえでは訪問看護師のパワーは絶大であり,家族のグリーフケアも含めてその対応にはいつも頭が下がる思いである.急変時には緊急連絡先を事前に家族に知らせており,連絡があれば電話対応,必要時には緊急訪問も行い呼吸停止の連絡があれば,当院ではできる限り早く訪問して死亡確認を行う.死亡時間については当院では医師が死亡確認した時間を記載している.それについてはさまざまな意見があるものの13),死の三徴候を確認し,死亡診断できるのは医師だけでありそれまでは心肺停止の状態であると考えているためである.また死亡確認に行く時間は訪問診療医にもさまざまな意見があり,夜間は行わず翌朝訪問して家族から呼吸が止まった時間を聞き,それを死亡時間として書類を作成する方もおられる.医療体制の問題,地域性の問題などそれぞれ事情があり,ご家族に事前にどのように対処するか十分説明して納得されている状況であれば,あまりにも時間経過が長くないのであれば,その部分は医師の裁量に任せられていると考えている.しかしながら,医師法第20条による但し書きを盾に死亡確認を行わずに死亡診断書の発行を行うのは,よほどの訪問できない事情(天候,地域性など)でない限り,在宅看取りを行ううえで許されるものではないと私は考える.その後は死亡診断書の発行,その後の手続きの説明,医療用麻薬の回収,訪問看護師らによりエンゼルケアなどを行う.