カレントテラピー 35-10 サンプル page 18/32
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カレントテラピー 35-10 サンプル
60 Current Therapy 2017 Vol.35 No.10968たり,病院,施設,自宅でも幸せな最期を迎えられない国民が増える可能性があるなか,今後,在宅医,警察医として何ができるか,やらなければならないか.今回の執筆にあたりこれら喫緊の問題として現状を提示し,読者の方に一考して頂ければ幸いである.Ⅱ 総論われわれの診療所は東京多摩地域に拠点を置く在宅緩和ケア充実診療所で,東京都立川市にあり,周辺16km圏内の訪問診療を行っている.がん終末期患者を多く抱え,年間約300例の患者の看取りを連携する訪問看護ステーションとともに行っている.東京都は多数の大病院があり,医療圏が多岐にわたっている.都市部においては市町村や地区医師会だけの地域包括ケアシステムでは緩和ケアの対応は困難であるため,がん患者の緩和ケアや看取りに特化した訪問診療システムが必要だと考える.そこで地域医療連携をより強化して地域の看取り力の向上,多職種間の顔の見えるネットワークづくりとして,以下を行っている.(1)「 緩和ケア実践塾の開催」:各分野エキスパートを講師として迎え入れて緩和ケアの学習機会を設けた.(2)「 多摩在宅ケアネットワーク」の立ち上げ:「在宅看取り力」の向上を目指して連携先の多職種のスタッフとの研修会,勉強会,連絡会議の開催をした6).これらは病院から在宅医療への切り替えに時間を費やしてしまい,患者の残された貴重な時間を奪ってしまっていた現状があり,医療機関の情報共有による顔の見える関係を保つため質の高い安心できる継続した在宅医療への基盤となった.また紹介先の病院スタッフ達へ,これらをフィードバックすることで連携強化を図るため,訪問開始時(当院では訪問診療開始前に必ず家族と面談を行っている)に,面談・訪問開始時の内容・病状・診療経過・その他今までの診療に関して患者や家族が吐露されたことなどを記載,終了時に訪問診療時の病態経過・転帰・死亡時にはその状況等,家族の気持ちも記載した詳細な報告書の送付を行っている.これらにより看取りのサポート力がアップし,病診連携の信頼強化により看取りまでを1つのチームという意識が生まれた.訪問地域のがんの在宅看取り率が格段に上昇,開業当初当院の癌終末期の在宅医療実施期間1カ月以内の死亡率は56%であったが46%と減少して在宅で過ごす時間が延長された.在宅医療において多職種連携は必須であるが,研修会,勉強会は個々に行っている現状があり,「在宅看取り」という考えは地域によって差があったが,現状を周知することで格差が是正された.また病院からの医療の継続性が保持され,病院スタッフが在宅医療の現況を知ることは,患者・家族が在宅緩和医療への移行について理解してもらうためにも重要であり,連携強化につながると考えられる.Ⅲ 在宅での看取り当院の訪問診療の流れとしては,まず何らかの形(病院紹介,ホームページ,口コミ,その他)で当院を知り,療養先の病院から依頼があり,前述のように最初に必ず患者家族(患者自身が来院することもあり)と当院で当院看護師とともに面談を行う.この面談が在宅看取りを行ううえでの最も重要なポイントであると考える.一般集団における終末期在宅療養の実現可能性の認識とその関連要因の調査において7),在宅療養の実現不可能の要因として,緩和ケアへの誤認識(痛みを和らげる薬を使うと中毒になる,最低限の治療として水分や栄養補給の点滴を最後まで続けるべきなど)を挙げており,それらを解きほぐす意味でも重要なのである.われわれは面談時には病院からの紹介状とともに,患者自身あるいは家族が知り得ている情報も記録していただき面談にのぞむ.これはひとつは病院主治医からの説明がどのくらい理解されているかの判断にも役立つからである.面談中には患者の病歴,治療歴を聞くとともに,現在の状態(食事,排せつの状態,ADL,痛みの有無,身体の状態など)病名,余命の告知の有無,今後どのように過ごしたいかとともに,最期はどこで迎