カレントテラピー 35-10 サンプル

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58 Current Therapy 2017 Vol.35 No.10966Ⅰ はじめに筆者は在宅医を行っている傍ら地域の警察医として異状死の検案業務も行っており,周辺地域を調査したところ在宅で亡くなる人の約半数が「異状死」として扱われている事例であった.わが国の死亡総数は約130万人となり,そのなかで自宅死亡は約16万人で約13%である.地域差はあると思われるが急性死の心疾患,脳血管疾患が多数で,がん,老衰,慢性疾患,難病なども約3割も含まれている.これらは本来かかりつけ医などが死因を判断できる範疇ではあるが救急搬送され,初診患者であり病死の可能性が高くても犯罪死を見逃さないために警察通報され検視が行われている.国の人口動態予側でも,死亡総数に対する病院,有床診療所,老人施設のベッド数が不足することを示しており,在宅看取りにもならない方々が検死対象となりこの先増加が予想されている(図1).また異状死の約半数から2/3は孤独死・孤立死である.超高齢多死社会を迎えるにあたり,独居の高齢者,あるいは老々介護などが増えるにあたり,この問題も少しずつ明らかになっている1)~3).筆者はこのような問題に対して事例を通し,在宅医療側,警察医の立場から自治体や地域医師会のなかで看取りに対するさまざまな取り組みが必要なことを提言してきた.各自治体は孤独死を防ぐセーフティネットのさまざまな取り組みを始め,またどうすれば早期に発見できるかの取り組みも併せて行っている.在宅医療側もこれらに協力するとともに各地域医師会が地域包括ケアシステムの名のもと,地域での看取りに対するさまざまな取り組みが行われていることは周知の事実である4),5).厚生労働省は昨夏に各自治体における自宅死の割合を発表したが(図2),多死化社会を迎えるにあ* 医療法人社団在和会 立川在宅ケアクリニック院長在宅医療の現況と展望─ 在宅医療の担い手を育成する在宅死と在宅看取り荘司輝昭*現在わが国が迎え始めている超高齢社会,多死化社会.最期の療養場所をどうするか.終末期を迎える患者は,痛みが緩和されることと,自分の生活スタイルを保ちながら残された時間を過ごすことができるのであれば,住み慣れた環境である自宅で安らかな最期を迎えたいと思っている人が多いといわれており,国は地域包括ケアシステムという名のもと,地域の自治体,医師会が中心となり高齢者を支え,最期まで地域で暮らせるシステムの構築を目指している.また,国の施策と相まって在宅医療も促進され,在宅(自宅)での看取りというものも少しずつではあるが啓蒙されている.その反面,在宅死統計のなかには多くの看取りではない自宅死も含まれている.これらについて,われわれが行っている在宅医療のなかでの在宅看取りへの取り組みを述べるとともに,在宅死の対応についても考えていきたい.