カレントテラピー 35-10 サンプル

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38 Current Therapy 2017 Vol.35 No.10946る.病院からの遠隔地での在宅医療においては,なおさらその決断に迷うこともある.このような場合に急性期対応の臨床検査項目は活用される.炎症反応や凝固・止血能,あるいは心臓循環器(心筋)指標の検査項目は,慢性期(維持期)のみならず,増悪時(疑いも含む)に対応する検査として実施されていると推定されている.感染症に対する検査も頻用項目ではないが,比較的活用されている.介護施設での感染症の流行時の対応の求めに応じて用いられることもあろう.また,感染症は致命的になることもある.治療薬のある急性の感染症(例:インフルエンザ)に対して,POCTのような検査は役立つこともあろう.病院や診療所の病棟や外来と同じように,血糖,ヘモグロビンA1c,また栄養,電解質,そして肝腎機能といった基本的な臨床検査項目が,多くの在宅医療機関で活用されていることは注目に値する.これは,低血糖や急性肝腎疾患,あるいは電解質異常のような急性病態への対応で実施されていることのほかに,生活習慣病のような慢性疾患をもつ高齢者が在宅医療を受ける対象として増えつつあることの反映であると推測されている.従来,特に都会では在宅医療の対象は終末期がんの場合で,慢性疾患向けの検査を実施することは必ずしも多くなかった.最近,慢性疾患を有し,通院が困難な状況(自動車運転の制限も一部に関与)にある高齢者が在宅医療の対象となるようになってきた.在宅医療の現場では,急性増悪時に対応する検査のみならず,慢性期に対応する検査の実施がますます増えてくると予想されている2).最近になって超音波検査が活用されるようになった.小型携帯式の検査機器の開発がこれを後押しした4).非侵襲的に繰り返して実施できる‘ポケットエコー’は,臓器診断や診療判断の助けとして,あたかも聴診器代わりの存在になりつつある.例えば,膀胱エコー検査〔適用例:膀胱留置カテーテルの確認や体液(含脱水)の管理〕,あるいは肺や関節へのエコー検査の実施に,それは見てとれる.Ⅴ 在宅臨床検査の課題在宅臨床検査(医)学の確立にかかわる課題にも触れておきたい.この領域や在宅医療で採用し得る検査機器の認知度の向上は課題である1),2).例えば,血液ガスの検査は在宅で実施可能であるが,それを認知していない医療従事者は珍しくない.企業側にも在宅医療に向けての機器の普及に関する意識が乏しい.実は,在宅での検査を経験した在宅療養者や介護者は,その実施に満足しているが,こうした評価はコミュニティに広がってはいない.広く啓発が必要で血糖血算電解質栄養指標肝機能腎機能炎症反応尿検査心電図検査凝固・止血能感染症超音波検査血液ガス心臓循環器指標ヘモグロビンA1c実施機関割合(%) (151医療機関からの回答)100 96.786.1 82.8 82.8 79.5 78.1 78.1 77.565.6 62.9 60.9 58.351.744.432.5806040200図在宅医療で実施される臨床検査項目〔参考文献1)を参照〕