カレントテラピー 35-10 サンプル

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カレントテラピー 35-10 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.10 37945能(系)検査も含める向きがある.POCTは検査所要時間の短縮とその場で判断できる長所を有し,ゆえに在宅での臨床検査については,基本的にPOCTで実施するのが理想とする意見もみられる.POCTの領域では,即時性や利便性のほかに,測定系の精度や信頼性に関しても追及が進んでいる(現有の精度は比較的良好とされている).一方で,POCTがエラーをきたすのは検査‘中’,すなわち検体を採取して検体を測定系に反応させる場面であることが少なくない(これと異なり,医療機関の検査がエラーをきたすのは測定‘前’に起因することが少なくない).このことが,測定者の訓練や測定装置の簡易化のような要望につながったり,POC(T)コーディネーターのような専門職の養成の話につながったりしている.現有のPOCT装置のラインアップ(文献1)に網羅されているので参照願いたい)や昨今の小型携帯式エコーの登場4)を考慮すると,手慣れた医療者が実施する在宅でのPOCTは,在宅医療を補完する役割を(未だ十分でないとしても)果たすと考えられる.Ⅲ 在宅臨床検査の実施状況在宅医療において,どのような臨床検査が実施されているのかについて調べた研究報告がある.在宅医療を提供する医療機関を対象にした全国レベルの調査が,2016年に実施された(図)1).在宅医療で臨床検査を現に実施している医療機関(151施設:在宅医療従事医師は50~60歳代が中心)が,居宅内で実施する臨床検査(基本的にPOCT)の項目に対して回答している.これによると,在宅医療で実施される臨床検査項目としては,血糖(95%超の機関で実施),血算,ヘモグロビンA1c,電解質,栄養,肝機能,腎機能,炎症反応(8割弱の機関で実施)が順に上位を占めた.さらに,尿,心電図検査,心臓循環器(心筋)指標,凝固・止血能,感染症,超音波検査,血液ガス(3割強の機関で実施)が続いた.これは,在宅医療の現場での診断や治療の過程において活用されている臨床検査項目の頻度をおよそ示している.また,急性増悪時のような急性期で用いられる検査項目群と,疾病管理としての慢性期で用いられる検査項目群ともに,現場で活用されている様子も窺える.Ⅳ 在宅臨床検査の動向病院のように多様で高度な検査ができる環境にない在宅で,可能な限りの情報を得るための一助として,在宅臨床検査は位置づけられる.在宅臨床検査(医)学の世界は未完成だが,一方で在宅医療の進行とともにさまざまな経験を蓄えつつある.例えば,高齢者の病状は,非典型的であったり,亜急性に推移したりして,病院に搬送するかどうかの判断に迷う場合があ表1 在宅医療でしばしば見られる疾患脳血管障害後遺症認知症高血圧症慢性心不全*急性感染症(呼吸器系・尿路系*)慢性肺疾患(+誤嚥性肺炎*)胃腸・肝胆膵疾患糖尿病脂質異常症運動器疾患神経難病悪性腫瘍老年症候群*急性の病状を示し得る疾患表2 在宅臨床検査の分類検査系統分野による分類 検体(系)検査 生理機能(系)検査使用フェーズによる分類 急性期対応用の検査群 慢性期対応用の検査群測定場所による分類 POCT;居宅で検査する方式 医療機関に検体を持ち帰る方式 検体検査センター(衛生検査所)に提出する方式 医療機関に短期入院して実施する方式〔参考文献1),2)を参照〕