カレントテラピー 35-10 サンプル

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36 Current Therapy 2017 Vol.35 No.10944Ⅰ はじめにわが国では,超高齢社会への移行や地域包括ケアシステムの構築とともに,「在宅医療」への関心は高まっている.在宅医療は質的に発達しつつあり,臨床検査も実施されるようになっている1).すなわち,“在宅臨床検査(医)学”の確立は,今日,重要課題となってきた1),2).本稿では,在宅医療における臨床検査の現況について概説する.Ⅱ 在宅での臨床検査在宅医療の世界は,医療機関,特に病院での医療とは異なる面をもっているが,一般には各種の疾患(表1)を有する対象者の居宅(含介護系施設)での療養生活の支援に重きが置かれる.この在宅医療における臨床検査に関してはその提供の内容によっていくつかに分類される(表2)1),2).臨床検査が必要になれば,医療機関での受診に切り替えることもあるし,在宅のままで検体を採取して医療機関に持ち帰ってその機関内で測定あるいは検体検査センター(外注機関の衛生研査所)に提出して測定することも行われてはいる1),3).在宅での臨床検査において,しばしば注目されるのは,ポイントオブケア検査(point ofcare testing:POCT)という方式である1),2).POCTとは,受検者の傍らで行われる検査(あるいは受検者自らが行う検査)のことである.POCTは,国外では血液や尿をはじめとする検体(系)検査に対する用語であるが,わが国では,検体(系)検査のみならず心電図検査や超音波検査のような生理機* 自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門教授在宅医療の現況と展望─ 在宅医療の担い手を育成する在宅医療における臨床検査小谷和彦*在宅での臨床検査はポイントオブケア検査(point of care testing:POCT)でしばしば実施され,在宅医療に寄与する情報源のひとつとなっている.わが国において在宅臨床検査を実施している在宅医療提供機関では,その検査を急性期にも慢性期にも活用している.血糖関連,栄養,肝腎機能,電解質,炎症反応,凝固・止血能,心臓循環器(心筋)指標,感染症,尿のほかに,心電図,超音波,血液ガスの検査を主として実施している.実施に関しては,在宅医療対象者の保有病態の頻度やPOCTの普及の程度などに依存するが,例えば,生活習慣病(慢性期)に対する検査,あるいは心筋指標や小型携帯超音波による検査は今後増えると推測される.在宅臨床検査(医)学の確立には,在宅臨床検査に対する認知,検査の指標や機器の研究や開発,情報科学との一体化,在宅臨床検査にかかわる人材の養成といった課題がある.広義には在宅検診のあり方も検討すべき点として挙げられる.在宅臨床検査には,時代に即した進歩が求められている.