カレントテラピー 35-1 サンプル page 5/32
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カレントテラピー 35-1 サンプル
8 Current Therapy 2017 Vol.35 No.18Ⅰ はじめに糖尿病性腎症は末期腎不全の主要な原因であり,その対策は国内外において急務の課題となっている.一方,近年の治療の進歩により,血糖コントロールのみならず血圧・脂質対策など集学的治療を行うことで,糖尿病性腎症の発症・進展をより抑制することが可能となり,さらには腎症の寛解(remission)が生じ得ることが報告されている.本稿ではまず,これまでの疫学研究を基に,糖尿病透析患者の現況,腎症病期の分布および腎症進展の割合について概説する.次に,心血管病・網膜症に対する腎症進展の影響について考察し,腎症発症・進展抑制の目的について考えていきたい.Ⅱ 糖尿病透析患者の現況糖尿病性腎症による末期腎不全患者は増加の一途をたどっており,新規透析導入は1998年より,全透析患者における糖尿病性腎症患者の割合も2011年より原疾患の第1位となっている(わが国の慢性透析療法の現況.2014年12月31日現在).具体的には,2014年末時点での新規導入患者における糖尿病性腎症の割合は43.5%(15,809人),全透析患者における割合は38.1%(118,081人)となっている.しかし,2011年頃より,新規透析導入における糖尿病性腎症の割合は横ばいから若干ではあるが減少傾向となっていることは注目すべき事項である.近年,米国におけるtheNational Health Interview Survey, the NationalHospital Discharge Survey, the U.S. Renal DataSystem, the U.S. National Vital Statistics Systemのデータを使用した大規模コホート研究の結果が報告された1).この研究では,1990年当初と比較して,2010年には急性心筋梗塞,脳卒中,下肢切断などに加えて,末期腎不全の発症が28.3%減少していた.しかし一方,同じく米国からの報告では,1988年当初と比較して,2014年時ではアルブミン尿の発症は有意に減少していたものの,推算糸球体濾過量(esti-*1 東京女子医科大学糖尿病センター内科助教*2 東京女子医科大学糖尿病センター内科准教授糖尿病性腎症の現況と進展阻止対策─ 生活習慣の修正と薬物療法糖尿病性腎症の疫学・経過・予後花井 豪*1・馬場園哲也*2近年の治療の進歩により,糖尿病患者の末期腎不全発症率は減少傾向にあるかもしれない.しかしいまだに,糖尿病性腎症による末期腎不全患者は,新規透析導入は1998年より,全透析患者における糖尿病性腎症患者の割合も2011年より原疾患の第1位であり,糖尿病性腎症の対策は急務の課題である.本稿では,これまでの疫学研究を基に,国内外における糖尿病透析患者の現況,腎症病期の分布および腎症進展の割合について概説する.さらには,心血管病・網膜症に対する腎症進展の影響について考察し,腎症発症・進展抑制の目的について考えていきたい.