カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 81Key words81糖尿病重症化予防─埼玉県方式─埼玉県保健医療部保健医療政策課政策幹 唐橋竜一埼玉県の糖尿病患者数は,2013年には約31万8千人,2001年に比べ2.1倍となっている.また,糖尿病性腎症を原疾患とする人工透析患者数は,同年・期間に6,742人,2.5倍となっている.いずれも,全国平均を上回るペースで増加しており,県民のQOLの維持,医療費高騰の抑制のため,糖尿病の重症化を予防し,新たに人工透析を導入する患者数を減らすことが課題となっている.そこで埼玉県では,埼玉県医師会,埼玉糖尿病対策推進会議と県の「三者連携」により糖尿病重症化予防に取り組むこととした.2014年5月に三者共同で「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し,これに基づき19市町で取り組みを開始した.国民健康保険加入者を対象として,特定健診とレセプトのデータを活用し,糖尿病が重症化するリスクの高い方を選定する.このうち医療機関未受診者や治療中断者には受診勧奨を行い,通院中の方にはかかりつけ医と連携して専門職が保健指導を行う.また,市町村が新たに保健事業を開始するには専門職不足が課題となるため,市町村と埼玉県国民健康保険団体連合会(以下,国保連)の共同事業とし,市町村が国保連や国保連が委託した民間事業者の専門職を活用して事業を行える仕組みとした.さらに,県が市町村に対して国民健康保険財政調整交付金による財政支援を行う.こうした支援により「市町村広域展開」が可能となり,2014年度に19市町で始まった取り組みが2015年度には30市町,2016年度には40市町に拡大してきている.被用者保険である協会けんぽ埼玉支部も2015年度から同様の事業を開始している.こうした取り組みにより,未受診者,受診中断者の医療機関新規受診,再開が増加し,保健指導を受けた方の検査値が改善する効果が出ている.医療費についてもデータを蓄積しており,今後,抑制効果を検証する予定である.2015年7月に民間主導で設立された日本健康会議は,「重症化予防に取り組む市町村を800以上とする」と宣言し,この目標を達成するため,埼玉県の「市町村広域展開」を好事例として紹介している.また,2016年4月には日本医師会,日本糖尿病対策推進会議,厚生労働省の三者が国版「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し,埼玉県の「三者連携」を全国に広める考えを示している.引き続き,本県事業の検証を進めつつ,国や医療関係団体,日本健康会議と協力して重症化予防の全国展開に貢献していく.