カレントテラピー 35-1 サンプル

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72 Current Therapy 2017 Vol.35 No.172Ⅰ はじめに糖尿病性腎症の治療は,血糖,血圧,脂質の管理とレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制,食事療法が基本となる.現在,腎症に対する有効性が確立されている薬剤はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のみであり,腎症が末期腎不全の最大の原因疾患となっている現状から,腎症に対する新規治療薬の開発が喫緊の課題となっている.糖尿病性腎症の成因の最上流に位置するものは高血糖であり,高血糖に加えて高血圧,脂質代謝異常も腎症の発症・進展に深く関与している.さらにその下流で複数のメカニズムが関与して腎症が発症すると考えられ,これらのメカニズムが治療薬開発の標的となり得る.本稿では,糖尿病性腎症の成因に基づいた新しい治療薬の開発について,最近の状況を中心に概説する.Ⅱ 糖尿病性腎症の成因と治療薬糖尿病性腎症は慢性的な高血糖により発症する腎疾患であり,高血糖から糸球体硬化,間質の線維化に至る経路には多くの因子が関与していると考えられる.高血糖の下流には,RA系の亢進と糸球体血行動態の変化,TGF -βなどのサイトカインの増加,高血糖による酸化ストレス,メイラード反応の亢進による終末糖化産物(advanced glycation endoproducts:AGEs)の増加,ポリオール代謝異常などの細胞内代謝異常を介したprotein kinase C(PKC)の活性化糖尿病性腎症の新しい治療薬四方賢一** 岡山大学病院新医療研究開発センター教授/岡山大学病院糖尿病センター副センター長糖尿病性腎症の現況と進展阻止対策─生活習慣の修正と薬物療法現在,糖尿病性腎症に対する有効性が確立されている薬剤はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のみであり,腎症に対する新規治療薬の開発が喫緊の課題となっている.腎症の成因には,高血糖・高血圧・脂質代謝異常の下流にあるレニン・アンジオテンシン(RA)系の亢進,糖化反応の亢進による終末糖化産物(advanced glycationend products:AGEs)の増加,酸化ストレス,細胞内代謝異常,炎症などの複数のメカニズムが関与しており,これらのメカニズムが新規治療薬開発の標的となる.最近,糖尿病治療薬であるSGLT 2阻害薬とGLP- 1 受容体作動薬の腎保護作用が明らかにされており,注目を集めている.さらに,現在,エンドセリンA 受容体阻害薬,抗酸化薬であるバルドキソロンメチル,ミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)拮抗薬などが腎症の新規治療薬として開発中であり,今後の臨床研究の結果が期待される.a b s t r a c t