カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 63代替療法63基礎的・臨床研究により示されているレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬14),またSGLT2阻害薬15),16)もこの糸球体過剰濾過/糸球体高血圧の改善作用を有していると考えられている.腎症を含むCKDの末期腎不全への進展予後を規定する因子としては,糸球体病変よりも尿細管間質病変の程度が重要である17).上述のように,蛋白質制限の糸球体に対する保護効果はこれまでの基礎研究を中心とした検討から明らかにされてきたが,蛋白質制限の尿細管間質病変に対する保護効果はいまだ明らかではない.その他,蛋白質制限に期待し得る効果として,リン負荷の軽減,酸負荷の軽減,尿毒素症状出現および透析導入遅延などが挙げられる18).Ⅳ 蛋白質摂取量の推定蛋白質制限を行うためには,蛋白質摂取量を客観的に評価する必要がある.24時間蓄尿を行い,Maroniの式〈1日蛋白摂取量=〔1日尿中尿素窒素(g)+0.031×体重kg〕×6.25〉を用い評価することが広く行われている(なお,高度蛋白尿の患者では尿蛋白量g/日を加味することがある).しかし,24時間蓄尿の施行は外来診療では容易ではないため,Kannoらにより作成されたスポット尿から蛋白質摂取量を推定する式〔蛋白質摂取量(/日)=13.9+0.907×BMI+0.0305×スポット尿中尿素窒素(mg/dL)〕も簡便で有用性が高い可能性がある19).Ⅴ 高度低蛋白質食は進展した2型糖尿病ラットの腎症(特に尿細管間質病変)を改善する最近われわれは,高度低蛋白質食の腎保護効果(特に尿細管間質)とその機序を2型糖尿病+肥満〔Wistarfatty(fa/fa )〕ラットを用いて明らかにした20).2型糖尿病ラット(24週齢雄)および対照ラットをそれぞれ標準食(たんぱく質23.8%,炭水化物59.4%)群と低蛋白質食(蛋白質5.8%,炭水化物77.8%)群に分別し20週間介入した.その結果,糖尿病で認められる腎肥大,尿アルブミン・尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)排泄量の増加,血漿シスタチンC値の上昇,組織学的変化としての腎線維化・尿細管障害・炎症,さらに電顕下で観察した近位尿細管細胞のミトコンドリア形態的異常(断片化・膨化)は,すべて低蛋白質食で著明に改善した.また糖尿病の近位尿細管細胞ではp62〔(オートファジー低下時に細胞内に蓄積)およびp-S6RP(S6 ribosomal protein)(オートファジーを抑制するmTORC1(mammalian target ofrapamycin complex1)の下流の分子〕免疫組織染色強度の増強,つまりmTORC1の活性化とオートファジーの機能の低下がみられたが,低蛋白質食でそれらの改善を認めた.以上より,糖尿病状態における近位尿細管細胞では,mTORC1の活性化に起因するオートファジーの低下により障害を受け断片化されたミトコンドリアが増加し,その結果,尿細管細胞障害,さらに腎機能低下へと導かれ,高度低蛋白質食はmTORC1の活性化を抑制することで,尿細管オートファジー機能を回復し,尿細管細胞保護効果,そして腎機能低下の抑制効果を発揮する可能性が考えられた.・糸球体過剰濾過↓⇒ 蛋白尿の減少,GFR低下速度の抑制(糸球体肥大/糸球体細小血管抵抗/糸球体高血圧の改善)・窒素代謝物の産生↓⇒尿毒症症状の軽減,透析導入の遅延・酸の負荷↓⇒代謝性アシドーシスの改善・リン摂取量↓⇒高リン血症の抑制表2蛋白質制限の腎保護効果の機序と期待される効果