カレントテラピー 35-1 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 39糖尿病性腎症の疫学・経過・予後・診断と治療39(eGFR 60mL/分/1.73m2以上)よりも,びまん性病変,結節性病変,尿細管・間質病変(間質の細胞浸潤,間質線維化・尿細管萎縮),血管病変(細動脈硝子化,動脈硬化)が進展していた16).しかしながら,すべての糖尿病患者に腎生検を施行することは困難であり,一般的には,臨床経過や網膜症などの合併症の有無,尿検査・腎機能検査所見などを総合的に判断して,診断することが多い.糖尿病性腎症における腎生検の適応について,尿蛋白陽性を主体とする検尿異常の患者で,長年の糖尿病歴や糖尿病網膜症を有している場合など,その原因として糖尿病性腎症が強く疑われる場合は,臨床診断の感度が95%と高く,腎生検による組織診断の意義は乏しい.ただし,①糖尿病網膜症を認めない場合,②沈渣で多数の変形赤血球や顆粒円柱などの活動性糸球体疾患を示唆する所見を認める場合,③腎症の時期に合致しない病態(尿蛋白の出現が糖尿病発症に先行する,急激な尿蛋白の増加,急激なGFRの低下など)を認める場合は,糖尿病性腎症以外の腎疾患の可能性があるため,腎生検の適応がある1).Ⅳ 糖尿病性腎症病期分類の改訂1983年にMogensenらは,1型糖尿病における腎症の臨床経過に基づいて,糖尿病性腎症の病期分類を初めて提唱した.わが国の腎症病期分類は,2型糖尿病にも適した内容として1991年に厚生省糖尿病性腎症調査研究班で作成され,2001年に糖尿病性腎症合同委員会で改訂された17).この病期分類は,尿蛋白(尿アルブミン)とGFR(クレアチニンクリアランス)を臨床的特徴として,「正常アルブミン尿から顕性アルブミン尿へ」,「正常腎機能から腎不全へ」と進行する糖尿病性腎症の経過に基づき,腎症の病期を第1 期(腎症前期),第2 期(早期腎症期),第3 期A・B(顕性腎症期),第4 期(腎不全期),第5 期(透析療法期)と設定していた.一方,CKDの概念が提唱され,GFR推算式による腎機能の評価が普及したことにより,正常アルブミン尿であってもGFRが低下する糖尿病例が存在することが示されている18).かかる症例の病態について,正常アルブミン尿の1型糖尿病を対象とした検討では,腎機能低下例(GFR 90mL/分/1.73m2未満)の糸球体病変(糸球体基底膜の肥厚,メサンギウム基質の増加)が,腎機能保持例(GFR 90mL/分/1.73m2以上)と比較して,高度であったことが示されている19).また,2型糖尿病の腎機能低下例(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)を対象とした検討では,正常アルブミン尿例において,微量アルブミン尿例や顕性アルブミン尿例よりも典型的な糖尿病性糸球体病変を示す症例が少なく,軽微な糸球体病変とは対照的に尿細管・間質病変ならびに血管病変が進展した“腎硬化症”の特徴を有する症例が多いことが示されている16),20),21).従来の腎症病期分類では,このような正常アルブミン尿や微量アルブミン尿のGFR低下例を適切に分類することが困難であったため,平成21~23年度厚生労働科学研究費補助金(腎疾患対策研究事業)「糖尿病性腎症の病態解明と新規治療法確立のための評価法の開発」の成績22)に基づき予後(腎,心血管,総死亡)を勘案した分類として,2013年12月に糖尿病性腎症合同委員会で「糖尿病性腎症病期分類2014」として改訂が行われた(表2)23).この病期分類では,2型糖尿病が発症してから末期腎不全に至るまでのすべての経過を,蛋白尿と腎機能(GFR)の2つの指標によって,5つの病期に分類している.主要変更点は,①病期分類に用いるGFRをeGFRに変更する,②第3期AとB区分を削除する(1g/日の蛋白尿で分類する根拠に乏しい),③GFR 30mL/分/1.73m2未満を尿アルブミン値にかかわらず腎不全とする,の3点であり,同時に,④いずれの病期においても非糖尿病性腎臓病との鑑別が重要であることが表記された.また,CKD重症度分類の普及を鑑み,CKD重症度分類との関係を示した付表が作成された(表2).この糖尿病性腎症病期分類2014による症例分布を,Japan Renal Biopsy Registry(J-RBR)ならびに日本腎臓学会と平成21~23年度厚生労働科学研究費補助金(腎疾患対策研究事業)「糖尿病性腎症の病態解明と新規治療法確立のための評価法の開発」の取り組みにより構築された糖尿病性腎症(腎生検実施例に限定しない)の前向きコホート研究である「糖尿病性腎