カレントテラピー 35-1 サンプル

カレントテラピー 35-1 サンプル page 12/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 35-1 サンプル の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 35-1 サンプル

38 Current Therapy 2017 Vol.35 No.138が提唱された(図1)13).一方,平成24~26年度厚生労働科学研究費補助金[難治性疾患等克服研究事業〔難治性疾患等実用化研究事業(腎疾患実用化研究事業)〕]「糖尿病性腎症ならびに腎硬化症の診療水準向上と重症化防止にむけた調査・研究」研究班により作成された「糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症の病理診断への手引き」では,糖尿病性腎症の病理学的定義を「糖尿病を有し,その特徴的な病理学的所見を呈し,臨床的ならびに病理学的に他の疾患を除外できるもの」としている.また,注釈にて,①糖尿病性腎症に特徴的な光学顕微鏡所見として,びまん性病変,結節性病変,糸球体基底膜二重化・内皮下腔開大,滲出性病変,メサンギウム融解,輸出入細動脈の硝子化を認める,②電子顕微鏡所見における糸球体基底膜および尿細管基底膜の肥厚は参考となる,③血管病変を主体とする腎硬化症ならびに他の腎疾患を合併しても良い,④糖尿病性腎症の病理診断においては,糖尿病罹病期間や糖尿病網膜症などの臨床所見も参考にすることを示している14).糖尿病罹病期間と糖尿病性腎症の組織診断との関連を示す知見として,腎生検を施行された糖尿病620例の検討では,組織診断が「糖尿病性腎症227例」「糖尿病性腎症と非糖尿病性腎疾患の合併164例」「非糖尿病性腎疾患220例」に分類され,「糖尿病性腎症」の組織診断を最も予測する臨床所見が“12年以上の糖尿病罹病期間”であったことが報告されている15).また,糖尿病性腎症の組織診断と糖尿病網膜症との関連を示す知見として,糖尿病性腎症合併を組織診断された2型糖尿病260例(男性164例,女性96例;平均年齢58.2歳)を対象とした当科の検討では,正常アルブミン(蛋白)尿例の約46%,アルブミン(蛋白)尿陽性例の約85%に糖尿病網膜症を認めた16).さらに,糖尿病性腎症の臨床経過と腎組織所見との関連について,1型糖尿病では,糸球体基底膜の肥厚,メサンギウム領域の拡大,間質の細胞数増加,細動脈の硝子化などがアルブミン尿増加と関連し,糸球体濾過面積の減少,間質の線維化,細動脈の血管壁肥厚などがGFR低下と関連することが報告されている.一方,2型糖尿病では,肥満,高血圧,加齢などの因子が加わって,組織像に多様性がある.糖尿病性腎症合併を組織診断された2型糖尿病260例の検討では,アルブミン(蛋白)尿陽性例では,eGFR低下の有無にかかわらず,正常アルブミン(蛋白)尿例よりも,糸球体病変(びまん性病変,結節性病変,滲出性病変,メサンギウム融解),間質線維化・尿細管萎縮,動脈硬化が進展していた16).また,アルブミン(蛋白)尿の有無にかかわらず,腎機能低下例(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)では,腎機能保持例ⅣⅢⅡBⅡAⅠGlobal glomerulosclerosisin>50% of glomeruli withlesions from class Ⅰ-Ⅲ?Nodular sclerosisin glomeruli?Mesangial expansion>25%Mesangial>capillary lumen?GBM>395 nm in female and>430 nm in male individuals of9 years and older at EM?Advanced diabeticnephropathyNodular sclerosisSevere mesangialexpansionMild mesangialexpansionYES GBM thickeningYESNoYESYESYESNoNoNo図1米国Renal Pathology Societyより提唱された糖尿病性腎症の病理分類糸球体病変を,メサンギウム拡大の程度(糸球体基底膜の肥厚,びまん性病変と結節性病変,硬化糸球体の頻度)により4 段階に分類している.〔参考文献13)より引用〕