カレントテラピー 35-1 サンプル

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カレントテラピー 35-1 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.1 3737であれば,微量アルブミン尿と判定する.尿中アルブミン排出率を用いる場合には,1日蓄尿であれば30~299 mg/ 24時間,時間尿であれば20~199μg/分を微量アルブミン尿と定義する.微量アルブミン尿だけでは糖尿病性腎症以外の諸病態も否定できないため,尿中Ⅳ型コラーゲン値の上昇や腎肥大などの糖尿病性腎病変の存在を示唆する所見が診断の参考になる.糖尿病患者におけるアルブミン尿の頻度について,糖尿病データマネジメント研究会(Japan DiabetesClinical Data Management Study Group:JDDM)の報告では,微量アルブミン尿を31.6%,顕性アルブミン尿を10.5%に認めており,腎症を有する糖尿病患者の約75~80%が微量アルブミン尿例であることを示している4).しかしながら,日常臨床においては,尿アルブミンの測定が必ずしも定期的に行われていないという問題が存在する.尿蛋白陰性あるいは軽度陽性の糖尿病患者では,少なくとも年1回は尿アルブミンを測定することが望まれる.また,アルブミン尿は,わが国では「アルブミン定量精密測定」として,「糖尿病または早期糖尿病性腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期または第2期のものに限る)に対して行った場合に,3カ月に1回に限り算定できる」とされており,高血圧,メタボリックシンドロームなど,ほかの疾患では算定が認められない点に注意が必要である5).さらに近年では,糖尿病患者におけるアルブミン尿のリスクについて,微量アルブミン尿の下限値以下の「正常高値」アルブミン尿の出現時から,腎機能低下ならびに心血管病,総死亡のリスクが増加することが示されており6),7),糖尿病性腎症を尿アルブミンより早期に診断し得る新たなマーカーの探索も重要と考えられる.糖尿病性腎症の補助診断検査として保険収載されている尿中Ⅳ型コラーゲンと尿中肝型脂肪酸結合蛋白(liver type-fatty acid bindingprotein:L-FABP)は,糖尿病性腎症の早期診断や予後予測における有用性が報告されている8),9).また近年では,尿を用いたプロテオミクス解析が,糖尿病性腎症の特異的診断,早期診断,予後予測に有用である可能性も報告されている10)~12).Ⅲ 糖尿病性腎症の病理診断糖尿病性腎症の確定診断には,腎組織所見が一助となる.日本腎臓学会より刊行された「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では,糖尿病によるCKDは「糖尿病性腎症」と表記された.一方,糖尿病を有するCKDで糖尿病性腎症かどうかは区別できない場合,あるいは広く糖尿病に合併したCKDは「糖尿病を伴うCKD」あるいは「糖尿病合併CKD」などと表現し,これらの2つの言葉の意味を明確に区別して用いている1).2010年に米国Renal Pathology Societyより,糸球体基底膜の肥厚,びまん性病変と結節性病変,硬化糸球体の頻度に基づいた糖尿病性腎症の病理分類1.測定対象2.必須事項尿中アルブミン値3.参考事項尿中アルブミン排出率尿中Ⅳ型コラーゲン値腎サイズ尿蛋白陰性か陽性(+1 程度)の糖尿病患者30~299 mg/gCr 3 回測定中2 回以上30~299 mg/ 24 hr または20~199μg/min7~8μg/gCr以上腎肥大注1)高血圧(良性腎硬化症),高度肥満,メタボリックシンドローム,尿路系異常・尿路感染症,うっ血性心不全などでも微量アルブミン尿を認めることがある.注2)高度の希釈尿,妊娠中・月経時の女性,過度の運動・過労・感冒などの条件下では検査を控える.注3)定性法で微量アルブミン尿を判定するのはスクリーニングの場合に限り,後日必ず上記定量法で確認する.注4)血糖や血圧管理が不良な場合,微量アルブミン尿の判定は避ける.表1糖尿病性腎症の早期診断基準〔参考文献3)より引用〕