カレントテラピー 34-9 サンプル

カレントテラピー 34-9 サンプル page 9/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-9 サンプル の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-9 サンプル

12 Current Therapy 2016 Vol.34 No.98362)ステントグラフト(血管内治療)A型の胸部大動脈血管内治療(thoracic endovascularaortic repair:TEVAR)の適応は逆行性Ⅲb型解離で,弓部以遠にあるエントリーの閉鎖を目指す.B型へのTEVARは合併症症例が適応となり11),エントリー閉鎖をまず行って不足があれば局所分枝へのステント内挿を追加する.3)保存的治療?高血圧への対応血圧は収縮期血圧100~120mmHg11)を目指す.合併症のないB型解離では,100 mmHg近くまで降圧すると,急性腎不全となることもあるので,その場合には110~130mmHg程度に降圧を緩めざるをえないこともある.発症直後の降圧はβ遮断薬,ニカルジピン,ニトログリセリン等を調節性のよい持続静注で投与する.特にβ遮断薬によって脈拍数を60以下にすることが予後を改善するとの報告がある13).その後は徐々に経口降圧剤にきりかえていくが,どの降圧剤が予後を改善するかのエビデンスは不足している.β遮断薬14),カルシウム拮抗薬15),アンジオテンシン変換酵素阻害薬16)などの有用性が報告されている.?急性腎不全への対応急激な降圧による腎血流の減少,入院直前に施行した造影CT検査による腎への影響,解離による腎動脈への影響,等が重なりしばしば急性腎不全が発症する.入院直前のCTに使用した造影剤のwash -outのために水負荷も行う.尿量が確保できない場合には降圧を緩めると,尿量が確保できることがある.?呼吸不全への対応急性期は厳しい安静が求められるため,臥床の時間が長く,無気肺が高頻度に出現する.また大動脈解離による広範な炎症により,全身性炎症反応症候群が引き起こされ,胸水が出現する.CRPが高いほど胸水が多い傾向にある.胸水は発症およそ5~7日をピークとして減少していく.不穏に対する鎮静剤は呼吸抑制を引き起こし,呼吸不全の増悪因子となることがある.また,AADの原因のひとつとして睡眠時無呼吸が関与しており3),鎮静剤によって気道閉塞が悪化して呼吸不全を引き起こす.低酸素血症に対して入院当日より酸素投与を行う.無気肺と胸水が増えて低酸素血症が進行すれば非侵襲的陽圧換気などが必要となることもある.胸腔穿刺が必要となるケースはまれであるが,挿管を避けるために行うこともある.?不穏への対応不穏は高率に合併し,大動脈解離の急性期治療における最も重要な管理項目のひとつである.AMIに比べ,はるかに厳しい安静などが関与していると予想されるが,その原因は不詳である.これを避けるために,安定剤,睡眠剤を必要に応じて投与するが,ベンゾジアゼピン系の薬剤は不穏を悪化させることもあり,抗精神病薬の投与が必要となる.低酸素血症も不穏の原因となるので,早めに対処する.不穏の程度があまりにもひどいケースは挿管管理が必要となる場合もある.3 慢性期フォローのポイントは解離の型によって異なる.開存型の場合は大動脈径が拡大して解離性大動脈瘤となり手術が必要となるかどうか,血栓閉塞型の場合には偽腔が縮小していくかどうか,ULP型では嚢状瘤となっていくかどうか,等に注意して観察する.手術の適応は大動脈瘤に対する手術適応に準ずる.開存B型解離が慢性期に瘤化した場合には,胸部下行,もしくは胸腹部の置換術を行うこととなるが,手術は難しく患者の負担も大きい.大動脈が手術適応となるまで待って手術を行う現在の治療法から,大動脈径が大きくなる前の比較的早期にTEVARを行ってremodelingを予防する「先行TEVAR」がトピックスであり17),どのような症例に,どのタイミングで行うことがよいかが議論されている.Ⅹ 予後東京都CCUネットワークの年次データでは,AADの30日死亡率が15%程度であるのに対し,AMIのそれは6~7%である.型別の死亡率は開存A型の多く