カレントテラピー 34-9 サンプル

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8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.9832Ⅰ はじめに急性大動脈解離(acute aortic dissection:AAD)は代表的な致死的循環器救急疾患であるが,重要な疾患であるにもかかわらず,よくわかっていないことが多い.“大動脈解離の臨床像”が本稿のテーマであるが,いくつかの切り口で最新の知見を説明しつつ「大動脈解離とはどのような病気であるか,臨床的になにが問題になるのか」を説明したい.Ⅱ 定義大動脈解離とは,“血液が大動脈内膜の破綻部分から外膜方向に向かって入り込み,中膜のおよそ外1/ 3のレベルで大動脈を長軸方向に引き裂きながら進行した結果,一定の距離で大動脈が2腔になった状態”を指す.「一定の距離」は,10mmを超える距離とするのが一般的である.Ⅲ 病態急性期の問題点は,破裂と分枝血流障害である.急性期の破裂の多くは上行大動脈に起こり,上行大動脈は心嚢に覆われているために(心嚢は心臓のみならず上行大動脈,肺動脈の一部まで覆っている),破裂は心膜腔への出血となり,心タンポナーデを引き起こす.AADにおける行政解剖症例(超急性期死亡例)の報告では,死亡原因は心タンポナーデが87%と圧倒的に多く,胸腔内への破裂は8%にすぎない1).動脈分枝への血流障害には2つのメカニズムがある.一つは解離が動脈分枝に及ぶことによる分枝局* 日本医科大学付属病院心臓血管集中治療科 講師大動脈解離の診断と治療の最近の動向急性大動脈解離の臨床像圷 宏一*急性大動脈解離は代表的な致死的循環器救急疾患であるが,重要な疾患であるにもかかわらず,十分にわかっていないことが多い.原因と発症機序の詳細は不明であるが,発症前にすでに「解離の準備状態」が中膜において形成されていると考えられている.この中膜病変は病理学的には「嚢状中膜壊死」と「弾性板の減少および弾性間架橋の減少」であり,これらを背景に血流によるずり応力などのさまざまな力学的因子が加わって解離が発症すると推定されている.急性大動脈解離は非常にpre-hospital deathが多く,なんとか心肺停止としてたどりついた患者を統計にいれると,以前考えられていたよりずっと頻度が高いことがわかってきた.急性期をのりきった開存B型解離に対し,手術適応まで大動脈径が拡大するのを待って治療するのではなく,拡大を事前に予測して行う「早期ステントグラフト内挿」が現在のトピックスである.