カレントテラピー 34-9 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.9 7831大動脈解離の診断と治療の最近の動向企画杏林大学医学部内科学Ⅱ 循環器内科教授吉野秀朗急性大動脈解離の患者を前にしたとき,この疾患についてはまだほとんど知らないということを痛切に感じさせられる.急性期にはとても死亡率が高く,確定診断は胸腹部造影CTで行い,治療は急速な降圧療法とともにA型解離であれば外科治療,B型解離であれば内科治療,最近はステントグラフトも使用されつつあると,この程度は,学生でも知っている.しかし,真の発生率はどのくらいか? 発症時平均発症年齢が,マルファン症候群を除いても急性心筋梗塞より低いのはなぜか? 典型的な急性大動脈解離では大動脈の石灰化に代表される動脈硬化が少ないのはなぜか? 以下に,わからないことを列挙してみる.・どのような機序で解離が発生するのか?・解離の発生には,遺伝子異常の関与は一部の症例のみか?・欧米でいうIntramural Hematomaは本当に大動脈の内膜裂孔がない解離なのか?・Intramural Hematomaとわれわれの非造影型(偽腔閉塞型)とは異なる疾患か?・A型偽腔閉塞型解離は,本当に偽腔開存型より軽症か?・A型偽腔開存型解離は手術,A型偽腔閉塞型解離は内科治療ないし必要によって手術でよいのか,偽腔閉塞型解離は本当に安心してよいか?・A型解離とB型解離の発症頻度はどのくらいか?・欧米ではA型偽腔閉塞型解離の頻度は10%程度というが,本当に少ないか?・大動脈解離が原因の脳虚血と通常の脳梗塞とを救急外来でどのように鑑別すればよいのか(急性期血栓溶解療法禁忌例をどう除外するか)?・急性期の少量心嚢液貯留はどうするか? どの程度怖いか?・急性大動脈解離は,発症時基本的に皆高血圧か? 血圧の正常例,低い症例は安心してよいのか?・胸痛を主訴としない症例はどのくらいあるか?・意識障害症例,心筋梗塞合併症例はどのくらいあるか?・目撃者のある来院時心肺停止症例にどのくらい急性大動脈解離が存在するか?・脳虚血合併の急性A型大動脈解離は発症後何時間までなら脳障害を回復できるか?・胸水貯留はなぜ起こるのか?・患者の不穏と胸水貯留が同時に起こるが関連するのか?・Ulcer-like projectionの拡大はどこまでが危ないか?・急性B型開存型解離,さらにA型解離に対するステントグラフトの適応は?・解離患者にリハビリはいつどのように行うか?などなど…….さまざまな疑問が湧き出てくる.内科医の行うPCIで治療が完了する急性心筋梗塞とは異なり,急性大動脈解離では,救急診療科,心臓血管外科,循環器内科の緊密な連携,さらにいつでも緊急手術を行うための麻酔科の協力なくしては,目の前の患者を救うことができない.一施設で同時に救える患者の数は限られており,地域全体にわたる救急診療システムの構築が急務であることは誰にも想像できるが,それには今なにが必要なのか.医療現場で発せられるさまざまな疑問をもう一度整理し,これに関する正答を考え,それを関係者皆で共有し,医療現場から,社会に向かって発信する,これが今,医療に携わる者に求められているように思う.エディトリアル