カレントテラピー 34-9 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.9 83急性大動脈解離の診断と治療907(sac formation)による偽腔内拡張期圧の上昇の可能性を挙げている4).Evangelistaらは,エントリーのサイズに注目した.連続184例のB型解離症例のフォローアップから,エントリーサイズが10 mm以上で遠隔期解離関連イベントの発生率および瘤径拡大率が共に高く,とりわけ解離近位側にエントリーを有するものの予後が最も悪かったと報告している5).3 逆行性解離によるStanford A型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖解離に対するTEVARでは大動脈健常部分を中枢側ランディングゾーンに用いることが望ましいが,逆行A型解離は中枢側ランディングゾーンを解離部分に置かざるを得ない.高齢患者,人工心肺手術に対する高リスク患者,輸血拒否患者などに対しては状況に応じてTEVARの適応が考慮される.4 Stanford A型急性解離に対するステントグラフト急性A型解離に対する上行大動脈へのTEVAR症例も報告されている6).大腿動脈,心尖アプローチが用いられるが,ランディングゾーンの狭さ,カテーテルの操作性やデバイスに課題を残す.破裂症例に対する開心術へのレスキュー,ブリッジ治療あるいはハイリスク患者に対する治療としての適応が考慮される.将来は経カテーテル的大動脈弁置換術(TranscatheterAortic Valve Implantation:TAVI)とステントグラフトの組み合わせによる大動脈基部に対するカテーテル治療が開発される可能性もあるだろう.Ⅳ 予後Eggebrechtらによると,急性解離に対するステントグラフト治療の609例のmetaanalysisでは周術期脳梗塞の発生は1.9%,対麻痺の発生は0.8%と低率で,外科手術への移行率は2.3%,30日死亡率は5.3%と良好であった7).また,INSTEADトライアルでは,2年後の実測生存率は88.9%,大動脈関連死亡生存率は94.4%と報告されている8).Desaiらは,合併症を伴うB型解離症例に対する,TEVAR施行の時期と合併症に関して132例の急性~亜急性B型解離症例に対するTEVAR症例の特徴を検討した.TEVAR施行時期は発症48時間以内の早期急性期,発症48時間から14日までの遅い急性期症例,および発症14日~6週間の亜急性期に分けられた.早期急性期症例の半数以上は破裂症例で,それ以外は臓器虚血であった.遅い急性期症例は新たなあるいは進行する臓器虚血(主に腎機能障害),切迫破裂,およびCT上強い真腔狭小化を認める症例に対して行われ,亜急性期には新たな臓器虚血,切迫破裂,破裂,および無症状だがリモデリングを促す目的の症例に行われていた.死亡を含む重大な合併症の発症率は,TEVAR留置時期が遅いほど有意に減少し,留置に伴う逆行A型解離は早期急性期症例に多く認められた.理論的にはより早期の介入が理想的なタイミングと考えられるが,炎症を伴う脆弱なフラップや大動脈に対してガイドワイヤやステントグラフトの与えるリスク(とりわけ逆行性解離)に注意が必要で,INSTEADトライアルでも発症60日以降のTEVARは技術的合併症が低く良好なリモデリングが得られたことから,急性期の合併症に対するTEVARはやむを得ないものの,リモデリングを目的としたTEVARは,ある程度の期間をおいてから行うほうが良いと結論した9).Brunkwallらは合併症のない急性B型解離61例に対するゴアR TAGRを用いたTEVARと保存治療をランダマイズ化し,初期成績を比較した〔Acute Dissection:Stent graft OR Best medical therapy(ADSORB)トライアル〕.その結果,TEVAR群で血栓化を伴うリモデリングが進行し瘤径の縮小化が誘導されたと報告している10).Gorlaらは,急性B型大動脈解離症例に対するTEVAR留置症例133例における留置後症候群(Postimplantationsyndrome:PIS)に関して検討した.PISは,38℃以上の発熱,留置72時間以内の白血球数>12,000 /μLかつCRP>10 mg/dL,血液培養陰性と定義され,フィブリノーゲン,Dダイマー,インターロイキン6が測定され,エンドポイントは死亡および主要有害事象(大動脈破裂,再治療の介入など)とした.結果としてPISは15.8%で認められ,インターロイキン6はPIS症例において24時間以内に有意に上昇した.死亡率においては有意差を認めなかっ