カレントテラピー 34-9 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.9 81905Ⅲ 適応1 解離に伴う合併症を有するStanford B型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖1)狭窄または閉塞真腔,分枝血管に対するTEVARリエントリー(re-entry)がないか,または小さいと偽腔の内圧が真腔より上昇し偽腔により真腔が圧排され,閉塞や狭窄が起こり,下肢,腎,腸管,脊髄虚血が生じることにより下肢虚血,尿量減少,腹痛,下半身麻痺などの症状(malperfusion syndrome)を起こす.機序として大動脈レベルでの真腔圧排はdynamic narrowing/obstruction,分枝レベルでの真腔圧排によるstatic narrowing/obstructionと分けて考える.治療効果はTEVARによるエントリー閉鎖による偽腔圧の低下により真腔の圧迫が解除されることにより得られる.真腔の狭窄に対しては,エントリー閉鎖が優先され,エントリー閉鎖が不可能な場合には狭窄部位へのTEVARが施行される.TEVAR留置後も分枝レベルでの虚血が残存する場合には追加ベア・ステント留置を考慮する.2)大動脈破裂破裂を伴うB型大動脈解離に対するTEVARは,人工血管置換術に代わって広まりつつある.偽腔開存型であれば,造影CTや経食道超音波検査によるエントリーの位置の同定が可能であり,エントリー閉鎖を目的としたTEVARを行う.血栓閉塞型の場合,ULP(ulcer-like projection)を治療の対象とするが,ULPを同定できず治療の範囲の決定に苦慮する場合もある(症例1,図1).・症例190歳男性.破裂,血胸,ショックで来院した血栓閉塞B型解離.ULPを認めず,根治性を考慮して広範囲にTEVAR(Relay:36/32×200mm)を施行した(図1a).術後対麻痺を発症した.2年経過した現在,大血管イベントはなく外来通院中である(図1b).2 合併症のないStanford B型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖現在,合併症を伴わない急性B型大動脈解離には降圧薬を用いた保存的治療が第一選択であるが,保存的治療による1年間での死亡率は約10%,3年で20~25%,5年間での死亡あるいは手術介入は50%に達すると報告されている2).そこで,合併症を伴わないB型解離性大動脈瘤においても,遠隔期大動脈関連有害事象をきたす可能性が高いと予想される場合は積極的にTEVARを行うべきであるとする考え(先制治療:preemptive therapy)が生まれた(症例2,図2).・ 症例2:50 歳男性.危険因子は高血圧,睡眠時無呼吸症候群.現病歴:2016年4月25日,朝歯磨き中に突然の胸a b図1B型解離,破裂,ショックに対する緊急TEVARa:術前,b:術後2 年