カレントテラピー 34-9 サンプル

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80 Current Therapy 2016 Vol.34 No.9904Ⅰ オープンステントグラフト急性大動脈解離に対するステントグラフト治療として,大動脈弓部置換に併施されるオープンステントグラフト(=Frozen Elephant Trunk Technique)とカテーテル的胸部ステントグラフト内挿術(ThoracicEndovascular Aortic Repair:TEVAR)がある.オープンステントグラフトは,反回神経損傷を避けつつ下行大動脈に存在するエントリー閉鎖による根治性を高める効果をもつ一方,主に深すぎる挿入によるとされる対麻痺発生のリスクが高くなるとの報告も多い.対麻痺予防の点においては大動脈弓部置換術を施行して十分な近位側ランディングゾーンを確保した後に,可及的早期にTEVARを行う二期的方法や,大動脈弓部置換術中,加温,心拍動再開後に一期的にTEVARを行う方法(いわゆるハイブリッドアプローチ)が有用である可能性も高く,今後の両者の比較検討が待たれる.Ⅱ TEVAR1998年に大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖の成績が報告されて以降徐々にその適応は拡大し,近年その適応や予後に関して多くの研究が報告されている.本邦では,2014年以降大動脈解離を適応とする複数のステントグラフトが薬事承認,保険収載されており,今後,デバイスの進歩に伴いその臨床応用がさらに拡大していくことが予想される1).* 杏林大学医学部心臓血管外科教授大動脈解離の診断と治療の最近の動向大動脈解離に対するステントグラフト窪田 博*急性大動脈解離に対する基本的な治療は強力な降圧薬を用いた保存療法であったが,解離に伴う合併症のある症例では,外科的治療が必要とされている.人工血管置換術などの外科的治療法は高いリスクを伴うため,その適応の決定に際してはリスク対効果を慎重に判断する必要があった.しかしカテーテル的胸部ステントグラフト内挿術(Thoracic Endovascular Aortic Repair:TEVAR)の出現によって,合併症のある急性B 型大動脈解離に対する治療戦略が大きく変わりつつある.さらに合併症の無いB型大動脈解離に対しても,遠隔期イベントの減少を考慮したリモデリングを目的とする先制治療の適否が検討されている.デバイスの進歩と相まって,今後もTEVARは急性大動脈解離に対してその適応を一層拡大していくであろう.本稿では急性B型大動脈解離症例におけるTEVAR の適応,方法に関して臨床例を交えて考察する.