カレントテラピー 34-9 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.9 65急性大動脈解離の診断と治療889カテーテルが冠動脈に挿入されると,それだけで血流が再開する場合がある.そのため,血管内超音波検査(intravascular ultrasound:IVUS)を施行し冠動脈解離の範囲と血管径を確認する(図4).主幹部の閉塞に対しては,短いステントを冠動脈入口部ぎりぎりから留置するが,冠動脈末梢まで解離が及び末梢で閉塞が起きている場合は,主幹部から閉塞部まで長くステントでカバーする必要がある.ステントサイズの決定は悩ましい.大きいステントは内膜損傷を起こす危険があるが,小さいステントは解離が治癒した後冠動脈径が拡大し拡張不足となることから,遅発性ステント血栓症を考慮しなければならない.大動脈解離に合併する冠動脈血流障害のほとんどの症例はNeri分類B型でカテーテル治療可能と思われるが,Neri分類C型,つまり冠動脈内膜の断裂している症例もありえる5).断裂した内膜が内腔に翻転して閉塞しているC型では,ガイドワイヤー不通過,またはガイドワイヤーが冠動脈を穿孔する可能性があり,操作に無理は禁物である.Ⅴ 手術治療のコツカテーテル治療が始まった時点で手術室の準備を開始すれば,大動脈手術の遅延を最低限にとどめることができる.しかし発症から来院までの時間経過によっては,どんなにカテーテル治療を迅速に進めても重篤な心筋ダメージが生じてしまうことも考えられる.そもそもLMT病変による急性心筋梗塞自体の院内死亡率は11~44%と高い6).カテーテル治療が終了した時点で心機能を評価し,大動脈手術の適応があるか否か,再度冷静に判断する必要がある.PCIに成功し,再疎通した後もショックから離脱できずPCPSを必要とするような状態であれば,大動脈手術で救命できる可能性はきわめて低い.また,脳血流障害による意識障害を併発している症例もしばしば経験する.Stanford A型急性大動脈解離の死亡率を0%にすることは不可能である.限りある医療資源を有効に使用するため,時には撤退も必要である.心機能が改善し大動脈手術を行う場合,冠動脈に留置されたステントの扱いを考えなければならない.Entryを切除し大動脈基部解離腔を閉鎖できれば冠動脈ステントは不要となる.さらに,LMTに拡張不十分なステントが残存すると亜急性血栓閉塞の危険があり,術後厳重な抗血小板薬の投与が必須となる.また,ステントが冠動脈入口部から大動脈側に突出している場合,ここから順行性の心筋保護液を注入することは困難である(図5).ステントを冠動脈内図5大動脈基部の術中所見左の冠動脈口から大動脈内に突出するステントを認め,この状態では心筋保護液の注入は不可能である.この症例ではステントを術中抜去した.