カレントテラピー 34-9 サンプル

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32 Current Therapy 2016 Vol.34 No.9856維,基質(プロテオグリカンなど)の4つの成分からなっており,さらにこれらの成分は組織化された層状の構造をしている.これをシェーマで示すと図1のようになる.まず,基盤となる構造として弾性板が存在するが,これは層状かつ同心円状に配列している(図1a).そして,それぞれの弾性板は架橋弾性線維で結合され,骨組み様の構造をしている(図1b)1).また,弾性板と弾性板の間には平滑筋細胞,膠原線維,基質が挟まれるように存在し,サンドイッチ状の構造をとっている(図1c).このサンドイッチ構造はlamellar unitと言われ,大動脈中膜を構成するひとつの単位を形成している2).lamellar unitは上行大動脈では50層以上,下行大動脈では30層以上存在している.バウムクーヘンのような構造を想像するとわかりやすい.しかし,中膜がバウムクーヘンやサンドイッチと異なるのは,さまざまなストレスに耐え得るような強靭な構造になっていることである.例えば,先に述べたように弾性線維は弾性板同士が架橋弾性線維によって連結され,全体的に統一されたひとつの骨組み様構造を形成している(図1b).また,平滑筋細胞は細胞突起を出して架橋弾性線維と複雑に絡み合い,結合している(図1c)3).大動脈壁は,心臓の収縮や拡張に合わせて受動的な拡張や収縮を繰り返しており,また,shear stressなどの流体力学的な力を常時受けるなど,強力かつ多様なストレスに常に曝されている.このようなストレスに耐えて大動脈の形状を保つことができるのは,この構成成分相互の連結構造があるためと考えられる.Ⅲ 大動脈解離の病理形態学─中膜の構造の変化─大動脈解離は「大動脈壁が中膜のレベルで二層に剥離(解離)し,動脈走行に沿ってある長さをもち二腔になった状態」と定義される(図2)4).解離はほとんどの場合中膜の外側で生じる.内膜裂孔はほとんどの場合存在し,Stanford A型の大動脈解離では上行大動脈の弁輪より数cm末梢の部位に生じることが多い5).興味深いのは,力学的な観点からはこの部内膜外膜弾性板平滑筋細胞弾性板膠原線維架橋弾性線維a b c中膜図1 正常大動脈の構造の模式図a:正常大動脈の全体像.中膜において同心円状に配列する弾性板を強調している.b:正常大動脈の中膜の構造.弾性板と架橋弾性線維の構造を強調している.c:lamellar unit の構造.大動脈内腔中膜解離図2 大動脈解離の組織像解離は中膜の外側で発生している.Elastica van Gieson 染色.