カレントテラピー 34-9 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.9 31855Ⅰ はじめに急性大動脈解離の画像診断や治療が近年飛躍的な進歩をし続けているのに対して,その病理形態学や発生病理の理論に関してはほとんど進歩がない状態が続いている.しかし,大動脈解離を発症しやすい遺伝性血管疾患や,偽腔閉塞型解離などの多様な病態の存在がしだいに明らかになるにつれ,急性大動脈解離の病理を理解し,それを臨床の場に生かす必要性が増しているように思われる.本稿では,基本的な形態学的理解を深めることを目的として,大動脈の正常の構造と急性大動脈解離の病理学的変化,そしてそこから類推される大動脈解離の発生病理について述べてみたい.Ⅱ 大動脈の正常の構造─特に中膜の構造について─動脈は大動脈を代表とする弾性型動脈と,全身に分布する中型から小型の動脈である筋型動脈の二種類に大きく分けられる.弾性型動脈も筋型動脈のいずれも内膜,中膜,外膜の三層からなっており,中膜が壁の大半を占めている.しかし,その構造は両者で大きく異なっている.筋型動脈では中膜は多量の平滑筋細胞からなり,能動的に収縮することを主たる役割のひとつとしている.一方,弾性型動脈では中膜に多量の弾性線維が存在しており,受動的な拡張と収縮を主たる役割としている.これは「ふいご」のような役割(Windkessel効果)を果たし,血液の滑らかな流れをつくることに大きく貢献している.大動脈中膜は主に平滑筋細胞,弾性線維,膠原線*1 株式会社エスアールエル顧問*2 九州大学大学院医学研究院病理病態学講師大動脈解離の診断と治療の最近の動向急性大動脈解離の病理中島 豊*1・中川和憲*2大動脈解離の病理発生には中膜の嚢胞状中膜変性が大きな役割を果たすことが以前より指摘されてきたが,すべての解離の原因を嚢胞状中膜変性で説明するのは困難である.通常の大動脈解離症例の大動脈中膜を詳細に観察すると架橋弾性線維の減少が認められる.Lamellar unitの層状の重なりを基本構造とする大動脈中膜において,架橋弾性線維は弾性板や平滑筋細胞と結合または絡み合い,層構造を安定に保つのに重要な役割を果たしていると考えられる.この架橋弾性線維が減少すると中膜の構成成分の相互の結合が減少して層構造の安定性が減弱し,解離の発生や進展につながる可能性が示唆される.このように大動脈解離の病理を考える際には中膜の構造,特に層構造の変化と安定性の減弱という観点から考える必要がある.近年,モダリティの進歩により大動脈中膜の微細な構造を詳細に観察することができるようになってきており,解離の発生メカニズムの解明がさらに進むことが期待される.