カレントテラピー 34-7 サンプル page 9/28
このページは カレントテラピー 34-7 サンプル の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 34-7 サンプル
12 Current Therapy 2016 Vol.34 No.7630Ⅲ NAFLD/NASHの予後1 NAFLD/NASHの肝病態の経過と予後NAFLD/NASHは肝線維化をほとんど認めない症例から肝硬変合併例まであり,その予後は線維化の進行度により大きく異なる.NASHとNAFLの比較では,NAFLの予後は一般住民とほぼ同等であるのに対し,NASHでは死亡リスクが1.34倍高いとされる2).NAFLDは8~21年の経過で5~8%が肝硬変に進展し,線維化進行の危険因子は体重増加,2型糖尿病またはインスリン抵抗性と報告され,2型糖尿病のコントロール状態が予後に関与し,HbA1cの増減と肝線維化が相関する2).NAFLDにおいて,栄養指導による減量可能例ではほぼ全例で肝機能障害が改善し,約60%の症例で脂肪肝が改善したと報告されている2).NASH線維化進行度の組織学的経時変化の検討では,観察期間3.2~13.8年で32~53%が進行,30~50%が不変,16~29%が改善したと報告される2).最近のシステマティックレビューでは,平均観察期間5.3年で,線維化は,38%が進行,41%が不変,21%が改善し,線維化進行の危険因子として,年齢と初回肝生検の炎症所見が抽出された2).NASHにおける5~10年の経過観察報告で,肝硬変の進展確率は5~20%,5年生存率は70~95%,10年生存率は50~90%,死因は肝関連死が10~20%と報告される(図6)2).一般にNAFLD/NASHは緩徐に進行する疾患とされるが,NASH診断後1~4カ月での死亡例の報告もある2).NASH肝硬変は,他の慢性肝疾患による肝硬変と比し過栄養状態であることが多く,肝予備能が比較的保たれ非代償期に移行する頻度が低い.肝発癌率は年率4%程度とC型肝炎ウイルス関連肝硬変の10%程度に比し低いことが報告されている2).2 NAFLD/NASHにおける2型糖尿病や心・脳血管病変の新規発症NAFLD/NASHにおいては,肝病変診断時の生活習慣病合併率が高いことに加え,将来の生活習慣病の新規発症や心・脳血管病変発症の危険も高いことが示唆されている2).荒瀬らは,糖尿病非合併NAFLD6,003例(平均年齢49歳)において411例の2型糖尿病新規発症例を平均4.9年の観察期間で認め,2型糖尿病新規発症に寄与する因子は観察開始時の空腹時血糖110~126mg/dL,中性脂肪150mg/dL以上,γ-GTP値正常上限以上であったと報告した4).また,心・脳血管病変発症のリスクも高く,NAFLD診断時60歳以上の1,798例中の累積心・脳血管病変発症率が10年で11.7%(虚血性心疾患6.6%,脳梗塞3.8%,脳出血1.3%),梗塞などの虚血性病変の危険因子は加齢・高血圧・2型糖尿病合併で,脳出血の危険因子は加齢・高血圧・低アルブミン血症・血小板減少であり,出血リスクには肝病変進行の関与が示唆されると報告した4).Ⅳ おわりにNAFLD/NASHでは,生活習慣病・肥満の合併が高頻度であり,これにより,生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険も増大すると考えられる.NAFLD/NASHの日常診療に際して,肝病変ばかりでなく,生活習慣病の範疇にある種々の病変に十分な注意を払う必要がある.参考文献1)日本消化器病学会:NAFLD/NASHの診療ガイドライン2014.南江堂, 東京, 20142)日本肝臓学会:NASH・NAFLDの診療ガイド2015.文光堂,東京, 20153)Chalasani N, Younossi Z, Lavine JE, et al;American GastroenterologicalAssociation;American Association for theStudy of Liver Diseases;American College of Gastroenterol-悪化32~53%不変30~50%改善16~29%NAFLD図6 NAFLDの予後〔参考文献2)より引用改変〕