カレントテラピー 34-7 サンプル page 5/28
このページは カレントテラピー 34-7 サンプル の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 34-7 サンプル
8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.7626Ⅰ はじめにわが国では近年,食習慣を含めたライフスタイルの欧米化による肥満人口の急激な増加に伴い,非飲酒者において内臓肥満・インスリン抵抗性を基盤として発症しメタボリック症候群の肝病変とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liverdisease:NAFLD)が急増している1).NAFLDは,一般に非進行性の病態である非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)と,肝組織でsteatohepatitisを示し肝硬変・肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)からなり,後者が約10~20%程度とされる(図1)2).NAFLD/NASHは現在世界的に増加傾向にある3).NAFLD/NASHの頻度は報告により異なる.その原因として,検討対象集団の相違や非飲酒者と定義される飲酒量の相違などが挙げられる.本稿では,NAFLD/NASHの疫学と予後について,基盤となる肥満・生活習慣病の現状と関連,肝関連および心・脳血管系イベント関連の死亡に関するわが国での現状を中心に概説する.Ⅱ NAFLD/NASHの疫学1 NAFLD/NASHの頻度NAFLD/NASHの頻度はわが国では9~30%程度と報告されてきた.約40,000人の健診受診者を対象とした荒瀬らの報告では,NAFLDの頻度は男性で*1 東京女子医科大学消化器内科講師*2 東京女子医科大学消化器内科教授NAFLD/NASH─ 病態に基づいた診断,治療戦略NAFLD/NASHの疫学・予後谷合麻紀子*1・橋本悦子*2非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)は肥満・生活習慣病と深い関連のある病態で,メタボリック症候群の肝病変とされる.わが国成人の健診におけるNAFLD合併率は,男性で約40%,女性で約20%と報告され,男性では漸増傾向に,女性では横ばいからわずかに減少傾向を示す.進行性の病態で肝生検により診断されるNASH は,NAFLD の約10~20%を占めるとされ,非進行性のNAFL とは病態の移行を認める.NAFLD/NASH では肥満・生活習慣病を高頻度に合併する.合併の状況には性別・年齢別特徴があり,若年男性症例では脂質異常症,若年女性症例では高度肥満,高齢女性では2型糖尿病合併が特徴的である.NAFLD/NASH の発症・病態進展の主たる基盤はインスリン抵抗性であり,その発症や重症化にはPNPLA 3遺伝子多型など遺伝的要因が関与する.NAFLDの予後は,肝硬変・肝癌などの肝疾患に関連する死亡と心・脳血管系イベントが関与し,NAFLDの生存率は一般住民に比べて低い.