カレントテラピー 34-7 サンプル page 4/28
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カレントテラピー 34-7 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.7 7625NAFLD/NASH― 病態に基づいた診断,治療戦略―企画横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授中島 淳非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の疾患概念がLudwigらによって提唱された1)1980年よりはや35年が過ぎ去った今,世界はどう変わったのだろうか.米国で当初は顧みられることがなかったが1990 年になる頃には患者の増加で急速にその認知が進んできた.2000 年頃は米国と比べわが国では希少疾患と考えられていたが現在本疾患が国民の健康に与える影響は甚大といっても過言ではない.NASHの背景疾患である非飲酒者の脂肪肝を総称してnonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)と呼ぶが,わが国にはNAFLD 患者は2,000 万人弱もいるとされる.その2~3 割が慢性進行性のNASHである.NASH は肝疾患でありながら肝硬変,肝臓癌で死亡することに加え,心血管イベントで死亡することも多いことが知られており注意を要する.近年糖尿病の死亡原因の1位は肝臓疾患(肝硬変,肝臓癌)であり,その多くはNASH 由来であるとされる.C 型肝炎の治療の進歩により「100%完治」する時代になり肝臓病は減少すると思えるかもしれないが,わが国ではNASH 由来の肝硬変や肝臓癌が急速に増加してきている.このように患者数の多い疾患であるがその確定診断も入院を要する肝生検に依存しなければならず,どのようにして多くの脂肪肝患者から慢性進行性の本疾患を絞り込むかも明確でない.また,保険適用のある治療薬もいまだ世界中を見ても存在しないのが実情である.昨年日本消化器病学会から本疾患のガイドラインが刊行され実地医家の先生方への啓蒙が進みつつある.今回はこのような背景の下,最近の本疾患の診断,病態,治療法などの進歩について,第一線のエキスパートの先生に執筆をお願いした.日々の診療で多くの患者に遭遇するようになった今,本特集はまさに旬な疾患であるNASH の最新の知識のアップデートとして必ずや役に立つと確信するものである.参考文献1)Ludwig J, Viggiano TR, McGill DB, et al:Nonalcoholic steatohepatitis:Mayo Clinic experiences with a hitherto unnamed disease. MayoClin Proc 55:434-438, 1980エディトリアル