カレントテラピー 34-7 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.7 79Key words697NAFLD/NASHと肝発癌─リスク因子と疫学・拾いあげ─東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン・消化器内科特任講師 建石良介慢性ウイルス肝炎を伴わない,いわゆる非B非C型肝癌が増加していることは,周知の事実となったが,その詳細な内訳はいまだ明らかになっていない.これまでの後ろ向き研究によると,BMI 25kg/m2以上の肥満者が約半数,男女比3:1,NAFLDの定義に当てはまるような飲酒量1日20g以下の集団が,男性の約4割,女性の約9割,男女合計すると約5割と推定されている.NAFLDにおいて肝線維化のない発癌例が少なからず存在することが報告されているが,実際にはNASHを含むNAFLDからの発癌例の過半数が肝硬変を合併しており,他の慢性肝疾患と同様に線維化の進行度と発癌リスクの間には正の相関関係が認められる.糖尿病の合併が独立したリスク因子であるかについては,結論が出ていないが,インスリン抵抗性~高インスリン血症が肝発癌を促進している可能性は高い.肝脂肪の蓄積の度合いと肝線維化の進行には逆相関がみられ,高度線維化進展例は,“burn-out NASH”と呼ばれるほとんど肝脂肪が消失した状態にあり,最も発癌リスクが高い状態と考えられている.肝逸脱酵素も肝線維化の進行と逆相関の関係にあり,実際発癌時のALT値は約半数で正常範囲内にある.NAFLDは,わが国の成人男性の2~3割を占めるきわめて頻度の高い病態であり,全員を肝癌サーベイランスの対象にするのは非現実的と考えられるが,効率的な高リスク群の囲い込み方法はいまだ確立されていない.まとめると,NAFLD/NASHからの発癌リスク因子は,肝線維化,肥満であり,体重減少を伴わない脂肪肝の改善は,むしろ危険なサインともいえる.肝線維化の評価に際して,血小板数は,C型肝炎に比較してNAFLD/NASHでは肝線維化を推定する検査として信頼度が低いと考えられており,肝弾性値測定や,各種肝線維化マーカーによって肝線維化を推定することが望ましい.NASHから肝硬変になった場合の年率発癌率は,2~3%と推定されており,これらの集団は,肝癌サーベイランスの対象となり得る.糖尿病合併例に関して,血糖コントロールの優劣が肝発癌に関係するかは,これからの研究課題である.