カレントテラピー 34-7 サンプル

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78 Current Therapy 2016 Vol.34 No.7696アルコール飲酒・喫煙とNAFLD/NASHJA広島総合病院肝臓内科主任部長 兵庫秀幸非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholicfatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の病態に基づいて,食事療法・運動療法・薬物治療の観点から前項で治療戦略が述べられている.NAFLD/NASHには,ライフスタイル,食事習慣・運動習慣,夜間就労・睡眠時間帯の違いのみならず喫煙習慣,飲酒などのさまざまな環境因子が関与している.日常診療を行ううえで,環境因子の是正も重要な治療のひとつと考えられる.軽視しがちであるが,喫煙や飲酒に警鐘を鳴らし是正することも重要な治療の一環である.飲酒と脂肪肝の関連性の報告はさまざまであり一定の見解を得ていない.少量の飲酒(平均週エタノール換算140g以下)がトランスアミナーゼ値を低下させるとするものや,280g/週未満の飲酒は脂肪肝リスクを下げるだけでなく280g/週以上の飲酒でも脂肪肝のリスクとなっていないとするもの,中等度飲酒はNASHの頻度を低下させるとするものもある.一方,少量飲酒のNAFLDでは,飲酒なしのNAFLDに比しインスリン抵抗性とともに肝線維化が促進するとされ,NASH肝硬変を対象としたコホート研究では機会飲酒(毎日エタノール換算20g/日以下,または週末のみエタノール換算30~60g/日),および過去の飲酒歴(過去5年間に機会飲酒以上の飲酒歴がある)両群とも,全く飲酒しないNASH肝硬変より肝細胞癌の発癌率が上昇することが示されている.筆者らは,健診受診者の解析から飲酒について,脂肪肝発症リスクに対し飲酒量に応じて男女ともにおおむねU字曲線を描くこと,さらに飲酒量のみならず肥満度の影響が大きいことを報告している.喫煙は多くの癌で死亡リスクを1.5~4.5倍高めることが知られている.動物実験では肥満のラットのみで喫煙によるALTの増加とNAFLDの組織像の悪化が,ヒトでは喫煙はNASHの組織学的重症度に関連すると報告されている.また,喫煙はNAFLDの発症に“ブリンクマン指数(喫煙指数)=1日の喫煙本数×喫煙年数”が≦399で1. 77倍(年齢,性別,肥満,高血圧,脂質異常症,血糖異常,飲酒で補正したリスク),≧400で2.04倍のNAFLDリスクと報告されている.喫煙歴のない人のNAFLDリスクが29.4%に対し,過去の喫煙歴・軽度~重度の喫煙歴のある人は,27.8~43.5%と高くなる.これらに肥満が加わるとNAFLDリスクはおおむね2倍以上に膨らむ.また,喫煙歴のない女性でも,幼少期から成人期にかけて受動喫煙がある場合,NAFLDリスクが25%増加するとされている.ここまで述べたように,喫煙はNAFLDの発症や進行に悪影響を及ぼす.また,飲酒はその量に応じて,あるいは,もっている病気に応じて好影響・悪影響を及ぼす.肥満は,これらの病態をさらに悪化させる.したがって,日常診療ではNAFLD/NASHの発症を減らすためにも,発症した肝疾患の進展抑制のためにも,患者さんに対して適切な飲酒量のアドバイスや禁煙を促すこと,併せて体重管理を行うことが重要と考えられる.禁煙後の体重増加にも注意が必要である.食事・運動療法を合わせてバランスのよい指導に取り組むことが重要である.NAFLD/NASH─ 病態に基づいた診断,治療戦略