カレントテラピー 34-7 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.7 51NAFLD/NASHの治療戦略669筋の自発的収縮に対し,拮抗筋を電気的刺激により収縮させることで主動筋収縮に対して抵抗をつくり出す小型で持ち運びが容易なシステムである(図)20).このように,HTSは主動筋と拮抗筋を同時に訓練できるだけでなく,自転車エルゴメータなどの有酸素運動中に同時に施行することが可能であり,有酸素運動効果と筋力増強効果が同時に得られる可能性がある21).これまでに,HTSにより高齢者の筋肉量と筋力の改善が明らかになっている22).また,近年,国際宇宙ステーションにおける研究により,宇宙空間での筋力保持における有用性も明らかになっている23).われわれは,食事・運動療法を3カ月間指導したにもかかわらず肝障害の改善を認めなかったNAFLD患者を対象に,HTSのNAFLD改善効果を検証した20).両大腿部の筋肉に対しHTSを3カ月間行った結果,ALT値の低下,インスリン抵抗性と脂肪肝の改善が認められた.本研究においてHTSによりNAFLDが改善した理由はいまだ明らかではないが,HTSにより筋肉量や基礎代謝の有意な増加は認められず,運動に伴うエネルギー消費がNAFLDの改善機序とは考えづらい.一方,電気刺激により糖代謝に関わるtypeⅡa筋線維が肥大することが報告されており24),HTSにより筋肉が糖を取り込みやすい性質に変化した可能性がある.また,筋肉はマイオカインと総称されるさまざまなサイトカインを分泌する内分泌臓器であることが明らかになっている20).本研究においても,代表的なマイオカインであるIL- 6(interleukin- 6)は,インスリン抵抗性やNAFLDの改善と相関が認められている20).近年,OhらもNAFLD患者に対しHTSを施行し,脂肪肝の改善とともに,血清tumornecrosis factor -α値や血清IL - 6値の低下を報告している25).このように,HTSはマイオカインを介してインスリン抵抗性と脂肪肝を改善している可能性もある.Ⅶ 肝硬変患者に対する運動療法肝硬変患者には従来,安静が指示されてきた.しかし,肥満を伴う肝硬変患者数の増加や,肥満が肝硬変の進展や肝発がんに関与していることが明らかになっている.また,筋萎縮(サルコペニア)も糖・脂質代謝異常の発症や患者の予後に関わる病態として注目されている26),27).そのため運動療法は,肝硬変A 膝関節進展時大腿四頭筋:随意収縮ハムストリングス:電気的収縮B 膝関節屈曲時ハムストリングス:随意収縮大腿四頭筋:電気的収縮図1 ハイブリッドトレーニングシステムA:膝関節進展時は大腿四頭筋に随意収縮が起こるため,ハムストリングスを電気的刺激し収縮させる.B:膝関節屈曲時にはハムストリングスに随意収縮が起こるため,大腿四頭筋を電気的刺激し収縮させる.〔参考文献20)より引用改変〕