カレントテラピー　34-7　サンプル page 13/28

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カレントテラピー　34-7　サンプル

50 Current Therapy 2016 Vol.34 No.7668pentaenoic acid（EPA）とdocosahexaenoic acid（DHA）にNAFLDの発症予防効果があることを報告している8）．また，IshitobiらはEPA（n- 3系脂肪酸）とAA（arachidonic acid：n- 6系脂肪酸）の比率の低下がNAFLD患者の心血管イベントと相関することを報告している9）．また脂肪酸のサプリメントを用いた介入試験も行われており，CapanniらはNAFLD患者28名にn - 3系脂肪酸1g/日を12カ月投与し，n - 6系/n - 3系脂肪酸比の低下とともに，血清AST，ALT，γ-GTP値の低下と腹部エコー検査にて脂肪肝の改善を報告している10）．さらにRyanらは，NAFLD患者に対し不飽和脂肪酸を多く含有する地中海食を提供し，同カロリーの低脂肪・高炭水化物食と比較して，体重変化に関わらず肝の脂肪沈着とインスリン抵抗性を改善することを報告している11）．このように，NAFLD患者には摂取エネルギーの適正化だけでなく，脂質代謝に着目した食事療法が重要である．Ⅳ 鉄代謝とNAFLD病態・治療肝細胞内の過剰な鉄沈着は酸化ストレスによる細胞障害を引き起こし，NAFLD/NASHの発症要因となる．Tsuchiyaらは37名のNAFLD患者を対象に，肝組織中の鉄関連分子の発現を検討している12）．その結果，NASH患者では肝細胞の鉄取り込みに関わるtransferrin receptor 2の発現が亢進していることを報告している12）．また，Hokiらは40名のNAFLD患者を対象に鉄代謝を評価し，NASH患者では血清ヘプシジンの濃度上昇やdivalent metal transporter 1（DMT1）mRNA濃度が上昇しており，十二指腸からの鉄吸収が亢進していることを明らかにしている13）．このようにNASH患者では肝細胞での鉄取り込みや十二指腸での鉄吸収が亢進した状態にあり，血清フェリチン値の上昇はNASH患者の同定に有用である14）．Yamamotoらは，12名のNAFLD患者を対象に鉄制限食がNAFLDに及ぼす影響を検討し，フェリチン値の低下とともにALT値が低下することを報告している15）．このように，NAFLD患者の診療に際しては鉄代謝に関する評価と食事指導が必要である．Ⅴ NAFLD/NASHに対する運動療法活動量の低下もNAFLDの主な原因であり，運動療法はNAFLD 患者に対する基本治療である．運動療法により内臓脂肪や肝内の脂肪量が減少することは明らかであるが，脂肪肝改善に必要な活動量についてはいまだ明らかではない．Ohらは，169名のNAFLD患者に有酸素運動を指示し，短時間（150分未満/週），中等度（週150～250分/週），長時間（250分以上/週）の有酸素運動がNAFLDに及ぼす影響を検討している．その結果，週250分以上の長時間の運動が必要であることを明らかにしている16）．また，この脂肪肝の改善は体重減少に関わらず認められることも明らかになっている16）．近年，NAFLDの新たな運動療法として，レジスタンストレーニングも注目されている．Takahashiらは，53名のNAFLD患者を対象に，レジスタンストレーニング（スクワット・膝を床につけた状態での腕立て伏せ；各10回3セットを週3回）を12週間行いNAFLD患者に及ぼす効果を検討している．その結果，筋肉量の増加とともにインスリン抵抗性とNAFLDの改善を認めている17）．NAFLD/NASH患者には，心血管疾患を合併しており長時間の有酸素運動が困難な場合もある．Rodriguezらは，心血管疾患のため運動制限がある患者に対して，8～10 種目のレジスタンストレーニングを12～15回/セット，1回1～3セット行うことを推奨している18）．運動療法を安全に行うためにも，患者の全身状態を考慮して運動を選択する必要があると思われる．Ⅵ ハイブリッドトレーニングシステムハイブリッドトレーニングシステム（hybrid trainingsystem：HTS）は宇宙空間（無重力状態）滞在中の廃用性筋萎縮を予防する目的に，当大学整形外科学講座/リハビリテーション部・九州工業大学・JAXA（宇宙航空研究開発機構）の共同研究により開発された新規トレーニングシステムである19）．HTSは主動