カレントテラピー 34-6 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.6 7517糖尿病治療における食事療法の課題と展望― 新たなエビデンスに基づいた食事療法―企画東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授宇都宮一典現在,糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加が問題となっているが,その背景には日本人の食習慣の変貌がある.昭和30年代の栄養摂取状況と比較すると,現在の日本人の総エネルギー摂取量は減少しており,いわゆる三大栄養素の摂取比率では,炭水化物は減少,脂質,たんぱく質は増加している.日本は国際的にみて最長寿国であり,和食はユネスコの無形文化遺産に認証され,健康食の代表のようにみられている.しかし,現在の日本人の生活習慣のなかに糖尿病増加の原因があることも間違いのないことであり,特に食習慣の変化による影響は大きい.このような生活習慣の変容は,日本人の生活形態が多様化しつつあることを示しているが,その一端には,経済的格差や人口の超高齢化に起因する現代社会の歪みが表象されていることを忘れてはならない.2型糖尿病では食事療法を治療の根幹としている.その目的は,総エネルギー摂取量を適正化し,糖尿病の主たる病態であるインスリン分泌不全を補完し,インスリン抵抗性を是正することによって,良好な代謝状態を維持することにある.しかし,食に対する価値観の多様化によって,数値のみを示す一方的な食事指導には,もはや実効性を期待できない.また,糖尿病合併症の疾患構造が大きく変貌しており,現行の栄養処方そのものの妥当性が問われている.一方,高齢者糖尿病の栄養管理には,別個な視点が求められる.現在の日本ほど,糖尿病患者の病態と食習慣において,多角的な対応を迫られている国はないであろう.本特集では,糖尿病の食事療法を実施する際に必ず問題となる項目をとり上げ,その分野のリーダーとして活躍されておられる方々にお願いし,現時点でのエビデンスに基づき,その在り方と課題について解説していただいた.一昨年,食事療法指針の根拠となるべき『日本人の食事摂取基準2015年版』が改訂・上梓された.今回の改訂では,生活習慣病の重症化予防にまで踏み込んでいる.その概要についての紹介もお願いした.読者には,食事療法の全体像をご理解いただけるものと自負している.昨今の低糖質食に関する論議などを聞くにつけ,栄養疫学とその活用法たるEvidence -Based Nutrition(EBN)の誤用・乱用に心を痛めざるをえない.食を科学することの目的は健康の探求にあり,食文化と不可分の関係にある.今後EBNを正しく活用し,日本人のための食事療法指針が策定されることを望んでいる.エディトリアル