カレントテラピー 34-6 サンプル

カレントテラピー 34-6 サンプル page 11/30

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-6 サンプル の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-6 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.6 55565Ⅰ はじめに食塩感受性とは,塩分摂取量に応じて血圧が上昇する高血圧症の病態のひとつであり,食塩非感受性と対をなす.食塩感受性高血圧症の代表としては原発性アルドステロン症のようなホルモン異常によるものがあるが,糖尿病患者もまた食塩感受性を呈しやすいことが古くから知られている.さらに,日本人を対象とした疫学研究から,食塩感受性高血圧患者は非感受性高血圧患者に比べて心血管イベントの予後が血圧値とは独立して不良であることが報告され,食塩感受性の重要性が再認識されている.本稿では食塩による血圧上昇メカニズムについて概説し,生活習慣改善指導に役立つ情報を提供する.Ⅱ 疫学,臨床研究最近,世界18カ国で10万人の尿中ナトリウム(Na)排泄量と血圧の関係が報告された1).本研究には日本人は含まれていないが,黒人,および東洋人では食塩感受性が多く,減塩指導は高血圧発症予防,治療において需要な位置を占めることが再確認された.2014年より開始された第二次健康日本21では,高血圧の有無にかかわらず目標塩分摂取量は従来の10gから8gに引き下げられている.また,日本高血圧学会では減塩ワーキンググループを中心とし,http://www.jpnsh.jp/general_salt.htmlにて減塩の重要性を広く知らしめ,医療者向けには『日本高血圧学会 減塩委員会報告2012』,『高血圧治療ガイドライン2014』といった書籍を通じて啓蒙活動を行っている.さらに,2015年には『食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン』で加工食品においては,「ナトリウム(表示するときは食塩相当量に換算すること)」と記載されるようになり,一般市民が食塩摂取量を簡便に知ることができるようになった.しかし,一方で,肥満,糖尿病患者における生活習慣の改善は一過性に体重を減らし,血圧を下げ,血糖のコントロールを改善するにもかかわらず長期* 東京大学医学部附属病院検査部講師糖尿病治療における食事療法の課題と展望─新たなエビデンスに基づいた食事療法食塩の昇圧機序下澤達雄*食塩摂取量が高血圧の発症に深くかかわることはよく知られている.特に糖尿病患者では食塩感受性が多いといわれ,治療の基本である食生活の改善における減塩の重要性が指摘されている.基礎研究では近年の遺伝子研究の目覚ましい進展から候補遺伝子も明らかになったが,さらにエピゲノム調節の関与,尿細管機能制御の新知見が積み重なってきた.また,生活習慣改善の長期介入研究や塩分摂取量の評価法の開発がされ,実臨床でも食塩感受性を意識した患者指導ができるようになってきた.