カレントテラピー 34-5 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.5 11放射線治療の最近の動向421また,集学的治療として開発中の分野として,局所進行肺癌,食道癌,膵癌,脳腫瘍,膀胱癌などの疾患が挙げられるとともに,再照射などの粒子線治療に特有の分野もある.Ⅴ 陽子線治療に対するアストロモデルポリシー(ASTRO model policy)2014年に米国放射線腫瘍学会(American Societyfor Radiation Oncology:ASTRO)は,陽子線治療に関する取り扱いを,放射線治療の専門的立場からモデルポリシーとして公表した2).ここには,陽子線治療の適応となる状態について,X線治療では治療適応が困難となる次の4つの条件が挙げられている.①病巣が重要臓器に近接しており,その臓器が耐えられる線量を超えないようにするために,病巣の外側の線量を急峻な線量勾配をもって避ける必要がある場合.例としては,頭蓋底腫瘍での視神経への線量の低減のための陽子線の利用が挙げられる.②病巣体積が大きく,線量が不均一になる場合.つまり,照射範囲に“ホットスポット(線量が高い点)”ができることを避ける必要がある場合.例として,巨大肝癌において胆管や門脈などの正常の構造に過照射とならないように,線量を均一に投与する必要がある場合が挙げられる.③線量の積算値において,X線治療では臨床的に意味のある毒性が増加する場合.例として,局所進行肺癌における照射範囲が広すぎるために,V 20などの積算値が,臨床的に許容される範囲を超える場合などが挙げられる.④同じ,あるいはすぐ隣の場所がすでに以前の放射線治療で照射されており,近くの正常組織の耐容線量の積算量を超えないように,線量分布を成型する必要がある場合.つまり,局所再発や辺縁再発への再度の放射線治療がこれに該当する.上記4つの条件は,主に線量分布上の特性の観点から,陽子線治療適応となる状態を整理したものであり,大変有用な基準と考えられる.またアストロモデルポリシーでは,上記の考え方や過去の論文から,疾患として陽子線治療の利用を推奨するものを,Group1として列挙している(表1).このうち,眼球腫瘍,頭蓋底腫瘍,脊椎腫瘍は,部位としての特異性からしばしばX線治療での根治的治療は困難なため,過去の歴史からも陽子線治療が行われてきた経緯があり,むしろ現在の標準治療となっている分野である.頭頸部癌,特に鼻腔・副鼻腔,頭蓋底領域では,眼球や視神経,頭蓋底近辺の中枢神経系と複雑に入り組んでいるため,陽子線治療により危険臓器に対する線量を低減すべき疾患である.この領域では,システマティックレビューにより,粒子線治療はX線治療に,陽子線治療がIMRTに対して,有意に5年生存率,5年無病生存率で上回っていたことが報告されている3).アストロモデルポリシーで原発性肝癌が適応疾患として挙げられる根拠となった論文は,すべて日本から,特に筑波大学からの研究結果であり4)~8),米国では高い評価を受けていることが伺える.小児がんに対する放射線治療は,患児の骨成長,知能発達,内分泌臓器などの長期にわたる副作用の原因となる.陽子線治療は正常組織への影響を最小限にできるため,これから成長する患児のためには最適な放射線治療と考えられている.アストロモデルポリシーでは,良性腫瘍や対症療法であっても小児に対しては陽子線治療を推奨している.また今後,臨床試験や多施設患者登録として行い,エビデンスを構築してゆくべき疾患としてはGroup2表1 アストロモデルポリシーにおいて,陽子線治療の利用を推進する疾患(Group1)・眼球腫瘍(脈絡膜悪性黒色腫を含む)・ 頭蓋底腫瘍,頭蓋底に近接する腫瘍(脊索腫,軟骨肉腫に限らず対象とする)・ 原発性および転移性脊椎腫瘍でX線治療での耐用線量を超える場合・原発性肝癌・ 小児に発症する原発性固形腫瘍(良性腫瘍や対症療法を含む)・ 放射線を最低限にするべき遺伝子病患者(NF -1,網膜芽細胞腫など)