カレントテラピー 34-5 サンプル

カレントテラピー 34-5 サンプル page 5/34

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-5 サンプル の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-5 サンプル

8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5418Ⅰ はじめに粒子線治療は,放射線治療のひとつの分野であり,本邦を含め先進諸国での施設数,実施患者数が増加傾向にある.本稿では,粒子線治療の特徴から世界での動向,適応の考え方などについて解説し,本邦における粒子線治療のあり方について考えてみたい.なお,外国には重粒子線治療施設は少なく,適応の考え方や各国の動向については,主に陽子線治療について解説することとする.Ⅱ 粒子線治療の特徴粒子線治療は,水素イオンを用いる陽子線治療と,主に炭素イオンを用いる重粒子線治療に分類される.治療に用いられる陽子線および炭素線は,加速器により高速に加速した水素,炭素の原子核であり,正の電荷を有する.粒子線はそのエネルギーに応じて一定の深さで止まり,病巣の深さに応じてエネルギーを選択することになる.粒子線を腫瘍の位置で止めることによって,少ない門数でもX線に比べて良好な線量分布を得ることが可能となる.X線と比べて,進行した大きな腫瘍に対しても正常組織への線量を減らすことができるのが特徴である.重粒子線治療施設は,陽子よりも重い粒子を加速するために大型の加速器が必要となり,陽子線治療施設の倍以上の設備投資が必要となる.同じ物理線量を投与した場合,陽子線の生物作用はX線とほぼ同等であるが,重粒子線は約3倍の作用があるとされている.このため,重粒子線はX線治療抵抗性腫瘍での効果増強が期待されている.一方* 筑波大学医学医療系放射線腫瘍学放射線治療─ 最近の動向と展望粒子線治療の適応疾患と世界動向櫻井英幸*・奥村敏之*・石川 仁*・福光延吉*・粟飯原輝人*・大西かよ子*・水本斉志*・大城佳子*・沼尻晴子*・滝澤大地*・斉藤 高*・田中圭一*・加沼玲子*・三浦航星*・坪井康次*・榮 武二*粒子線治療は,その効果・安全性の高さへの期待から先進諸国での施設数が増加傾向にある.本邦では主に先進医療として行われてきており,いくつかの疾患では保険収載が検討されている.主な適応疾患として,小児・若年者の腫瘍,頭蓋底腫瘍,鼻・副鼻腔腫瘍,眼腫瘍,骨軟部腫瘍があり,これらの希少疾患については多くの研究者が有用性を認めている.肝癌については本邦から多くの研究発表が行われ,欧米では高い評価がなされている.一方で早期肺癌や前立腺癌では,定位放射線治療や強度変調照射法などの高精度X線治療とのすみ分けが問題となるため,今後のエビデンスを構築してゆく必要がある.