カレントテラピー 34-5 サンプル page 31/34
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カレントテラピー 34-5 サンプル
82 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5492線量体積ヒストグラム(Dose Volume Histogram:DVH)広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線腫瘍学特任教授 西尾禎治放射線治療では,腫瘍への線量集中性と周辺正常組織への線量低減が重要である.放射線治療の治療計画では照射される放射線の線量計算によって,関心領域(Region Of Interest:ROI)である腫瘍および各周辺臓器に対する線量分布を得ることができる.ROIは体積をもつため,線量分布形状に従う各線量へ対応した体積の割合が重要となる.しかしながら,CT画像上に線量分布の計算結果を2次元および3次元で表示した場合,各ROIの体積に対する線量カバレッジを定量的に判断することは困難である.そこで,その定量的判断を可能とするために,線量体積ヒストグラム(Dose Volume Histogram:DVH)が用いられる.通常,DVHは照射線量を横軸に,ROIの体積値を縦軸に取る.照射線量はGyや%で,体積値はccや%などで表記される.また,このDVHには微分型と積分型がある.微分型DVHでは,照射線量の各線量でのROIの部分的体積値で表現される.一方,積分型DVHでは,照射線量の各線量以上が照射されたROIの体積値で表現される.なお,放射線治療では,積分型DVHを利用するほうが一般的である.以前の放射線治療では,腫瘍内の一点,主に腫瘍中心における点線量処方が実施されていたが,近年の高精度放射線治療では体積線量処方が一般的になりつつある.治療計画における線量分布を評価する際,DVHが果たす役割は非常に大きい.例えば評価指標として,腫瘍に相当する体積の95%に対して50 Gy以上を処方線量とする場合はD 95=50 Gy,また,正常肺の体積に対して20 Gy以上が照射される領域が10%未満の場合はV20<10%と表記される.放射線治療の最適な治療計画,すなわち,最適な照射方法とは,縦横軸%表示の積分型DVHにおいて,各軸と線量100%で体積100%の交点から各軸への垂線からなる四角形に対して,腫瘍に関係するDVHは四角形内右上隅へ近づき,かつ100%線量からの線量降下が急峻であること,重要臓器に関するDVHは左下隅へ近づき,かつ高線量体積が少ないことである.高精度放射線治療のひとつである強度変調放射線治療(IntensityModulated Radiation Therapy:IMRT)では,治療計画を実施する際にDVH上で各ROIに対する線量制約を設定することで,線量分布の最適化計算を行う.以上のように,DVHは現在の放射線治療に必要不可欠な線量評価指標となっている.