カレントテラピー 34-5 サンプル page 30/34
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カレントテラピー 34-5 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.5 81491連続回転強度変調放射線治療(Volumetric Modulated Arc Therapy:VMAT)東京大学医学部附属病院放射線科放射線治療部門特任助教 名和要武東京大学医学部附属病院放射線科放射線治療部門准教授 中川恵一正常組織の安全性を担保しつつ,腫瘍組織に放射線を照射する.この限局的放射線照射の理想が,放射線治療の歴史を牽引してきた.その具現化のひとつが「連続回転強度変調放射線治療(Volumetric Modulated Arc Therapy:VMAT)」である.1957年に梅垣によって提案された「可変絞り照射法」がその原点である.これは「可変絞り」で腫瘍形状に合わせた照射野を形成しつつ回転照射するものであり,今日のMulti-Leaf Collimator(MLC)の原型を与えている.VMATの数理的アイディアの根幹は,1988年にBrahmeによって提案された強度変調放射線治療(Intensity ModulatedRadiation Therapy:IMRT)である.IMRTは,望ましい線量が実現するまで,計画者が各方向から照射する線量を逐次的に選定する従来手法とは異なり,上記の試行錯誤の過程を計算機に自動算出させる,いわゆるInversePlanningと呼ばれる新しい概念を提示していた.このIMRTと従来のMLCによる原体照射を組み合わせた,回転型のIMRTの先駆けが,1993年に提案されたHelical Tomotherapyである.TomotherapyはCT装置とリニアックの動作環境を融合し,すなわちCT撮影時と同様に寝台を移動させながら治療用ファンビームを回転照射するものである.これによりInversePlanningが臨床的に初めて導入された.一方,腫瘍が体軸方向に長い場合,Helical照射では照射時間が長くなる問題を解決するアイディアが,1995年にYuによって提案された.強度変調回転照射(Intensity Modulated Arc Therapy:IMAT)がそれであり,一定線量率の下,多重に回転照射を繰り返すことで強度変調を実現させた.しかし分割照射の場合,一回の処方線量が回転数の上限を与えるため,十分な強度変調を与えることができないという困難さがあった.またIMATを計画するための商用治療計画装置が存在せず,各研究施設で独自に開発された計画装置によらねばならなかったことも,十分な普及を妨げた.このような状況の下,2008年にOttoによって提案されたのが,標記のVMATである.VMATは「ガントリ回転速度」,「照射野」および「線量率」をダイナミックに変化させる連続回転照射技法であり,少数の回転でも複雑な線量分布を構成することができるようになった.またVMATのInverse Planningを行う商用治療計画装置の開発をメーカ各社が競ったことも,VMAT普及の大きな一助となった.VMATの適応症例は年々拡がっており,今日の高精度放射線治療の中軸を成している.昨今,治療計画装置の向上だけでなく,治療装置もFlatteningFilter Freeなど新しい技術が導入されており,VMATは今なお進化の途上にある.放射線治療─ 最近の動向と展望