カレントテラピー 34-5 サンプル

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76 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5486動によって動く体積すべてを含めて治療を行う.そのため,放射線を照射する体積が大きくなり,副作用が増大する可能性がある.さらに,治療中・治療期間中の腫瘍の呼吸性移動量,移動軌跡,呼吸位相の変化に対応しなければ,放射線を腫瘍に対して高精度に照射できない可能性がある2).また,正常組織を避けながら腫瘍の形に沿って放射線の照射が可能である強度変調放射線治療を呼吸性移動のある部位に施行すると,放射線の強度を変調させるために駆動するマルチリーフコリメータと腫瘍の動きとの相互作用により,予期しなかった高線量領域や低線量領域を発生させ,腫瘍の局所制御率を低下させ,さらに正常組織の副作用を増加させる可能性もある3).米国医学物理学会によるタスクグループ76では,CTやMRI,透視画像を使用して,さまざまな部位の呼吸性移動量について報告している.肺腫瘍では腫瘍の存在する領域にも依存するが,自由呼吸下では,頭尾,背腹,左右のそれぞれの方向に,5~20mm,8~15mm,5~10 mm程度の呼吸性移動がある.腹部臓器(肝・胆・膵・腎)では,三次元的な呼吸移動のみならず,回転移動や変形などの要素もあるといわれており,呼吸性移動の大きさは,5~20mmと報告されている4).このように,人間の呼吸性移動による腫瘍の動きは臓器によってさまざまである.その対策が必要とされ,かつ可能な場合の条件として,①腫瘍の呼吸性移動が5 mm以上,②呼吸の管理自体が可能(患者的にも施設的にも),③臨床目標が呼吸性移動対策なしでは達成できない,を挙げている.また,わが国においても,2012年度から診療報酬上も呼吸性移動対策について条件を満たせば加算が算定できるようになった.診療報酬上の呼吸性移動対策は以下の要件を満たす方法と定義されている.①呼吸性移動対策を行わない場合,呼吸による移動長が10 mmを超える腫瘍を対象とする.②呼吸性移動対策により,呼吸性移動を補償するために必要な照射範囲の拡大が三次元的な各方向においてそれぞれ5mm以下に低減できることを治療計画時に確認・記録する.③毎回の照射直前または照射中に,②で設定された照射範囲内に腫瘍が含まれていることを確認・記録する5).呼吸性移動などの動きを伴う部位に対する放射線治療において,その対策がいかに重要であるかがわかる.Ⅲ 呼吸性移動対策呼吸性移動の影響を低減させるために,さまざまな方法が用いられてきた.一般的に呼吸は横隔膜運動による腹式呼吸の要素が大きいため,腹部圧迫をすることで,呼吸性移動量を低減させることができる6).しかし,腹部圧迫では,圧迫の仕方により,治療期間中の腫瘍の位置再現性が悪くなり,腫瘍の局所制御率が低くなる可能性がある7).また,息止めによる方法も多く存在するが,この場合,腫瘍の位置再現性が重要になってくる.換気量測定機器を用いた呼吸停止法があり,active breathingcontrol(ABC)system8)やdeep inspirited breathhold(DIBH)法9),visual feedback法10)を用いた自己呼吸停止法などがある.さらに,自由呼吸のなかで,呼吸位相中のある一定の部分のみに放射線を照射する呼吸同期照射がある.主流となっている呼吸同期照射は,腹壁移動や換気流量などの外部信号を腫瘍の動きの代替信号として行われる.しかし,この照射方法は外部信号と腫瘍の動きに相関性があることが前提であり,治療期間中には,この相関性の変動や,腫瘍の呼吸性移動量・移動軌跡・呼吸位相の変化などの問題があり,呼吸性移動対策をより効果的に実施するためには,リアルタイムの画像誘導放射線治療が重要であると報告されている11).Ⅳ 画像誘導放射線治療画像誘導放射線治療とは,2方向以上の二次元照合画像,または三次元照合画像に基づき,治療時の患者位置変位量を三次元的に計測,修正し,治療計画で決定した照射位置を可能な限り再現する照合技術