カレントテラピー 34-5 サンプル

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カレントテラピー 34-5 サンプル

70 Current Therapy 2016 Vol.34 No.54802.0Gyを3次元照射によって行う.照射野は全頚部へ40 Gy~50 Gy程度照射後に縮小し,原発巣と転移リンパ節に限局し66Gy~70Gyまで照射する.放射線単独群に比べ,口腔粘膜炎や咽頭炎,皮膚炎が増強されやすいため,疼痛管理を含めた万全の対策を要する2).また,できるだけ正常組織の線量を低減する努力が必要であり,強度変調放射線治療(intensitymodulated radiation therapy:IMRT)を用いることが望ましい.大阪大学ではsimultaneous integratedboost により,同じ照射野で予防的リンパ節領域へは56 Gy,潜在的腫瘍存在領域へは63 Gy,原発巣と転移リンパ節には70Gy(D50処方)を照射している(図1a).それにより3次元原体照射に比べ,耳下腺や脊髄,口腔粘膜などの正常組織の線量低減が可能である.2 肺癌手術不能で根治的胸部放射線治療が可能な局所進行非小細胞肺癌患者には,全身状態が良好な場合はプラチナ製剤を含む同時化学放射線療法(CDDP等)を行うことが推奨されている3).また,小細胞肺癌に対しても全身状態が良好な症例ではCDDPなどのプラチナ製剤を用いた早期同時併用化学放射線療法が推奨されている4).放射線の線量は非小細胞肺癌に対しては60Gy/1.8~2.0Gy,小細胞肺癌に対しては45Gy/1.5x 2Gy程度である.照射範囲は3次元照射により,原発巣+転移リンパ節+所属リンパ節または原発巣+転移リンパ節とする.同時併用では急性有害事象の頻度が高く3),適応症例の選択に配慮するとともに,3次元照射等を用いて正常肺の線量を極力減らす必要がある.肺のV20を25%以下にすることはひとつの指標となる5).または,V20とVS5(5Gy線量でスペアされる肺の体積),年齢,pulmonary fibrosis scoreとの組み合わせで有害事象の予測率を向上できることが報告されている6).また,放射線とゲムシタビン(GEM)またはブレオマイシン(BLM)との併用は肺,食道の有害事象のリスクが高く,これらの薬剤が使用される(た)場合には胸部放射線治療はわが国では警告,あるいは禁忌となっている.3次元照射によってリスク臓器の線量を低減した照射が可能となり,RTOG0617ではパクリタキセル+カルボプラチン±セツキシマブに放射線60Gyまたは74Gyの第Ⅲ相ランダム比較試験が行われ,中間生存期間は60Gy群が有意に長く(60Gy:28.7カ月, 74Gy:20.3カ月,p=0.004),さらに74Gy群では,治療関連死,重度食道炎の増加が報告された7).したがって,現時点では高線量照射による化学放射線療法の意義は明らかでない.3 食道癌CDDP,5- フルオロウラシル(5-FU),ドセタキセル(DOC)を用いた同時化学放射線療法が行われる.線量は本邦では60 Gy/1.8~2.0 Gy,欧米では50.4 Gy/1.8 Gyが標準である.照射野は原発巣+転移リンパ節+所属リンパ節または原発巣+転移リンパ節とする.化学放射線療法では放射線単独と比較して合併症が増強され,特に急性期では放射線肺臓炎,晩発性では肺線維症,心嚢液貯留,胸水に注意を要する8).そのため,肺と心臓などの正常組織の線量を減らす必要がある.例えば,前後対向2門照射後に斜入2門合併症部位薬剤名中枢神経メトトレキセート末梢神経ビンクリスチン,パクリタキセル,ドセタキセル肺,食道アドリアマイシン,ブレオマイシン,ゲムシタビン心嚢アドリアマイシン,ゲムシタビン下部消化管5-フルオロウラシル,テガフール・ギメラシル・オテラシル,テガフール・ウラシル腎臓シスプラチン,アドリアマイシン膀胱シクロホスファミド,イホスファミド皮膚,粘膜アドリアマイシン,ブレオマイシン,5-フルオロウラシル血小板ゲムシタビン表3化学放射線療法における薬剤ごとの合併症