カレントテラピー 34-5 サンプル

カレントテラピー 34-5 サンプル page 17/34

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-5 サンプル の電子ブックに掲載されている17ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-5 サンプル

68 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5478Ⅰ はじめに化学療法と放射線療法の併用は単なる相加効果だけでなく,放射線の効果を強める効果があることが明らかにされている.さらに従来抗がん剤は全身に広がった微小転移にも効果があるため,遠隔転移を抑制する狙いもある.実際に,肺癌,食道癌,頭頚部腫瘍,直腸癌などに対し,治療成績が大幅に改善されつつある.本稿では,化学放射線療法の基礎,臨床を紹介するとともに,分子標的薬と放射線の併用や将来展望について解説する.Ⅱ 化学放射線療法の基礎化学放射線療法の意義は,抗がん剤の放射線増感効果による局所制御率の向上や,潜在的遠隔転移予防効果などが挙げられる.最近の放射線生物研究によれば,相加効果だけでなく,放射線増感効果や抗腫瘍免疫増強などの相乗効果も得られていることが報告されている1).抗がん剤の種類は①細胞障害性抗がん剤,②分子標的薬,③ホルモン剤に大別される.細胞障害性抗がん剤はがん細胞だけでなく,正常細胞にも作用するために,時に重篤な副作用がみられることがある.一方,分子標的薬はがん細胞上(中)の特定の分子を標的にするため,がんに対する特異性が高く,副作用はあるものの,化学療法とは異なるものとなる.抗がん剤の作用機序は表1に示すようにDNA合成阻害,細胞分裂阻害,DNA損傷,代謝拮抗,栄養障害などである.アルキル化剤と白金製剤以外はその効果に細胞周期依存性がある.これらの薬剤のうち,化学放射線療法で放射線単独より上乗せ効果のあったエビデンスレベルIの疾患部位との組み合わせを表2に示す.また,目的に応じて化学療法と放射線療法の投与のタイミングが異なり,臓器温存のためにはconcurrent chemoradiotherapy(CRT),再発予防にはadjuvant CRT,ダウンステージングにはneoadjuvant CRTが用いられる.照射前の化学療法は頭頚部癌や子宮頸癌などでは再増殖等により効果が減少することがある.一方で,照射後の化学療法*1 大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学教室特任講師*2 大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学教室特任助教*3 大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学教室助教*4 大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学教室教授放射線治療─ 最近の動向と展望化学療法・分子標的薬との併用治療の動向高橋 豊*1・玉利慶介*2・瀬尾雄二*3・小川和彦*4化学療法と放射線療法の併用は単独治療に比べ,相乗効果があることが明らかになっている.一方で副作用も増強されるが,近年の放射線治療技術の発展により,正常組織の線量を低減させることが可能となり,副作用を軽減できるようになってきた.さらに,分子イメージングや分子生物学的な手法を用い,化学放射線療法の治療効果や副作用の予測マーカーが解明されつつあり,今後は臨床,物理,生物的側面に基づいた個別化した化学放射線療法が提供できる可能性がある.