カレントテラピー 34-5 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.5 61放射線治療研究の最前線471容積変化等々によって,経時的に形態および位置変化が起き得る.1990年台後半からX線治療の領域で行われるようになった体幹部定位放射線治療の初期から,この体内標的存在位置および形態変化の克服が研究されてきた.概念的な整理と4 D -CTの一般的普及とが相まって,現在では臨床標的体積(clinicaltarget volume:CTV),計画標的体積(planningtarget volume:PTV)に介在する体内標的体積(internal target volume:ITV)の概念が提唱され,すでに臨床的に用いられるに至った.これは,放射線治療の過程で起き得る位置変動の要素をあらかじめ加味し,照射すべき範囲を拡大しておくことで不足なく腫瘍に線量を投与しようとするものである.こういった概念的克服のほか,腫瘍の位置そのものを把握し,適切に治療放射線を制御する機器を開発,導入する試みがなされてきた.1999年には,標的存在位置をマーカーを通してリアルタイムに捕捉しながら迎撃法による放射線治療が可能となる動体追跡放射線治療装置が臨床に供された4).陽子線治療においては,感圧式のセンサーを用いて呼吸位相を取得し,望ましい呼吸位相にある場合にのみ陽子線照射を行う呼吸同期法が行われてきた5),6).スキャニング法による照射では,呼吸性移動等で照射中に腫瘍が動いてしまうと治療計画と同じ線量分布が得られなくなる可能性が指摘されインタープレイ効果として知られている1).シミュレーションによる研究では,5mm以上の動きをもった腫瘍に対して,特に対策なくスキャニング照射を行うと標的体積内の不均一が許容できる範囲を超え,臨床的に問題とされる7).スキャニング法を体幹部等,照射中の動きが想定される腫瘍の治療に用いる場合,ある程度までの動きに対してはリペインティング法(標的容積に対して何回かに分けてスキャニングを行い分散的に照射する)などを用いることで標的線量の不均一は緩和できる.しかし,横隔膜近傍では標的の動きは通常5mm以上である.標的そのものの位置変動をリアルタイムにとらえて対応を行わなければ不均一の緩和は困難である.この問題の克服は難しいと考えられていたが,リアルタイムに体内の構造物の位置を取得できる動体追跡機能をスポットスキャニング陽子線治療装置に装備したことで,適切に治療陽子線をゲーティングすることが可能となり,克服できることとなった8()図3).リアルタイム画像ゲーティングによる陽子線治療(Real-time-image Gated Proton beam Therapy:RGPT)装置は腫瘍近傍に挿入した金属マーカーの位置をX線透視で毎秒30回リアルタイムに認識し,腫瘍が治療計画を行ったときと同じ位置に存在するときにのみ陽子線を照射するゲーティング照射法を行うことができる.通常,マーカーの位置が治療計画時と±2mm以内に位置しているときのみ陽子線が照射され,前述のリペインティング法を繰り返さずとも標的内の線量均一性を担保可能である9).2014年2月に同機能の薬事承認が得られ,以後臨床使用が行われている.Ⅳ 画像誘導粒子線治療とコーンビームCT画像誘導放射線治療(Image Guided RadiationTherapy:IGRT)とは,「2方向以上の二次元照合画像,または三次元照合画像に基づき,治療時の患者位置変位量を三次元的に計測,修正し,治療計画で決定した照射位置を可能な限り再現する照合技術」と定義されている10).診療報酬上は,「毎回の照射時に治療計画時と照射時の照射中心位置の三次元的な空間再現性が5 mm以内であることを照射室内で画図3 照射中の臓器の動きに対応した陽子線治療装置(日立製作所PROBEAT-RT)