カレントテラピー 34-5 サンプル page 12/34
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カレントテラピー 34-5 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.5 59469用いてCT画像を取得するコーンビームCTによる精密な患者位置合わせも粒子線治療の領域で活用が開始されつつある.Ⅱ 強度変調陽子線治療(IMPT)IMPTは,粒子線スキャニング法による照射をさらに高度な形で応用することで複雑な形状をもった腫瘍に対する線量増加,および保護すべき臓器に対する線量負荷を低減することが可能な治療法として期待されている.がん診療において世界的に著名なMDアンダーソンがんセンターにて2010年より臨床使用が開始されているスキャニング法は,腫瘍を複数の層に分割し,層ごとに点描または一筆書きで立体に色を塗りこむように細い陽子線ビームを届けることでがんの治療を行う.深さ方向は,陽子線を加速するエネルギーによって制御する.層ごとの面内での形状は,電磁石を用いて陽子線ビームの方向を上下左右に振り分けることによって形成する1).X線治療ではすでに強度変調放射線治療(IntensityModulated Radiation Therapy:IMRT)が先進医療承認を経て,2008年より健康保険収載下で治療が行われている.複数の方向から各方向ごとに異なった照射野で照射を行うことにより,線量を総合的に腫瘍に集中させ,かつ隣接する正常組織や保護対象臓器への線量低減を図ることが可能となった.この方法を粒子線治療に応用することは医療技術の発展の過程として至極当然の成り行きといえる.IMRTは日本放射線腫瘍学会等によるガイドライン2)の定義上,「三次元原体照射の進化形であり,逆方向治療計画(インバースプラン)に基づき,空間的,時間的に不均一な放射線強度を持つ照射ビームを多方向から照射することにより,病巣部に最適な線量分布を得る放射線治療法」であるとされている.また,ガイドラインでは「IMRTはfield -in field法を用いた従来型三次元原体照射法とは異なり,IMRTの保険請求は,3方向以上の照射角度から各門3- 5ステップ以上の線束強度変化をもつビームによる治療計画を逆方向治療計画法にて立案のうえ加療した場合に限るべきである」とされている.IMPTの定義については明確な邦文定義は存在していないが,放射線治療の部分を陽子線治療とし,前述したIMRTの定義を援用するとすれば,1.逆方向治療計画(インバースプラン)が行われていること,2.空間的,時間的に不均一な放射線強度を持つ照射ビームが用いられていること(3- 5ステップ以上),3.多方向からの照射であること(3方向以上),となる.スキャニング法による陽子線治療は,例え一門照射であっても,その門の中である部位は線量を多く,ある部位は少なくといったように,門の中での線量の強弱が本質的に可能である.均一の線量分布が望ましければそのように設定もでき,対象標的は均一の線量で治療される.一方,ある部分を,急性期有害事象もしくは晩期有害事象の発現頻度を低減する,または予防的リンパ節領域に対して腫瘍と比較し相対的に少ない線量で照射する場合等には,複数の指示線量や規制線量が存在する場合がある.臨床上望まれる線量分布を得るための治療計画の際,スキャニング法での線量計算の最適化法として,SFO法(各門ごと最適化法:Single Field Optimization),MFO法(複数門最適化法:Multi Field Optimization)がある3).SFO法は,各門独立して腫瘍,正常組織に対する線量付与を計算する.照射門ごとの体内各部位への付与線量は,アイソセンター(照射を行う際の座標系中心)もしくは,例えば臨床標的体積(clinicaltarget volume:CTV)などに対してその99%に付与される線量(D99)等,指示線量を満たすように各門独立して計算される.複数門を用いた治療であれば,各門の結果を積算した線量分布により治療計画を評価する(図1).一方,MFO法では,事前に設定した臨床的パラメータに応じて逆演算によって照射パラメータが計算され,それぞれの門ごとの配分比も演算によって決定される.陽子線はある深さで停止するためそれ以深の臓器には有害事象を避けるよう治療計画を行えるが,腫瘍の前面に保護すべき臓器がある場合は物理法則に従ってある一定の線量付与は避けられない.こうした場合に,MFO法を用いるIMPTでは粒子線の治療計画上不都合な線量投与経路に存在する部分は他の