カレントテラピー 34-5 サンプル page 11/34
このページは カレントテラピー 34-5 サンプル の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 34-5 サンプル
58 Current Therapy 2016 Vol.34 No.5468Ⅰ はじめに陽子線治療は現在国内10施設で先進医療,臨床試験の枠組みの下で治療を提供している.陽子線は,体内の特定の深さで特異的にエネルギーを放出し,それより深い部分に影響を及ぼさない理想的な物理的特性があり,これをがん治療に応用することで,腫瘍に対して可能な限りの線量を与えつつ極力正常組織を守るという従来のX線を用いた放射線治療では通常二律背反する臨床上の要請を克服することができ,放射線治療の理想に近い.散乱体法を用いた陽子線治療装置が従来より用いられてきたが,近年の技術開発を基にスキャニング法による陽子線治療が行われるようになった.散乱体法は原理的に照射野内で線量の強弱を得ることは難しいが,スキャニング法ではコンピュータによる制御で容易に強弱をつくり出すことができ,腫瘍への線量集中,副作用の低減および放射線治療の自由度を高め,高度かつ高精度な放射線治療が可能である.次世代の治療法とされたスキャニング法による治療はすでに実臨床に適用される段階となっている.スキャニング法による陽子線治療を発展的に利用するより高度な技術として,強度変調陽子線治療(IntensityModulated Proton Therapy:IMPT)が用いられ始めている.一方で,粒子線スキャニング法で治療を行う際に考慮すべきインタープレイエフェクト,すなわち照射対象の動きに対応する問題は,X線治療で15年以上の臨床実績がある動体追跡技術により克服され臨床治療が開始された.X線治療ではすでに臨床で用いられている画像誘導放射線治療技術,特に照射室内でのガントリー内に設置された機器を* 北海道大学大学院医学研究科放射線治療医学分野准教授放射線治療─ 最近の動向と展望陽子線治療の最前線─強度変調・動体追跡・コーンビームCT─清水伸一*陽子線治療は現在国内10施設で稼働しており,腫瘍に対して可能な限りの線量を与え正常組織を守るという放射線治療の理想に近い照射が可能であるとして治療が行われている.今まで一般的に用いられてきた散乱体法に代わりスキャニング法が実臨床に適用され,これを基にして陽子線治療を発展的に利用する,より高度な技術,強度変調陽子線治療(Intensity Modulated ProtonTherapy:IMPT)が臨床に用いられ始め,さらなる副作用の低減が試みられている.また,粒子線スキャニング法で治療を行う際に必要な照射対象の動きに対応する問題の克服に動体追跡技術の組み合わせが実用化され,臨床治療が開始されている.X線治療では広く普及が始まっている画像誘導放射線治療に関して,特に照射室内でのガントリー内に設置された機器を用いてCT画像を取得するコーンビームCTも粒子線治療の領域で利用が開始され,より高精度な粒子線治療・陽子線治療が提供されつつある.