カレントテラピー 34-4 サンプル page 5/30
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カレントテラピー 34-4 サンプル
8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.4320Ⅰ はじめに─新しい治療薬の出現─メラノーマは転移を起こしやすい難治ながんとして有名である.一般の人は,「こんなに小さな病変が命を奪うことになるなんて」という印象をもたれるであろう.メラノーマは早期に発見してしっかりと切除すると再発することは少ない.しかし,転移が生じると,従来の治療法では病勢を十分に抑えることがかなわなかった.最近まで主に用いられてきたダカルバジンは単剤で使用した場合,奏効率が5~20%であった.多くが部分奏効(partial response:PR)であり,完全奏効(complete response:CR)はまれで,生存期間を延長する効果は乏しいのが実情であった1).一方で,有効性の高い薬剤を求めて多くの臨床試験が行われてきたが,奏効率は改善するものの,生存期間の延長は認められないといったことが繰り返されてきた.しかしこの数年,免疫チェックポイント阻害薬,BRAF阻害薬といった新規の薬剤の有効性がトップジャーナルの誌面をにぎわせるようになっている.さらに,本邦でも保険承認され,実際の医療現場で使用が可能となった.効果は症例によって異なるものの,これまで経験したことのないような治療効果がみられるケースも出てきている.免疫学,分子生物学,遺伝子工学といったさまざまな基礎研究の成果が,このような新しい薬剤を誕生へと導いた訳であるが,さらに新規薬剤の登場も期待し得る状況である.* 信州大学医学部皮膚科学教室教授メラノーマ─ 基礎から最新薬物療法までメラノーマ医療の現状と将来展望奥山隆平*メラノーマは難治性のがんである.最近まで,転移が出現した際に十分な有効性を示す治療法が乏しいのが実情であった.しかし,新しい治療法がどんどん出現し,改善が期待し得る状況に少しずつなってきた.これは,免疫チェックポイント阻害薬の開発に負うところが大である.T細胞上に発現する共刺激分子や共阻害分子は,抗原に対する反応の強度を制御することで,免疫活性を調節する働きを有している.つまり共刺激分子や共阻害分子は免疫チェックポイントを制御する分子であり,ここに働きかけると,自分自身の免疫活性が高まり,抗腫瘍効果が誘導されることになる.免疫チェックポイントに働きかける新規薬剤の開発も進められており,有害事象の弱く,かつ効果のさらに優れた薬剤の出現が期待されている.また,ワクチン療法,養子免疫療法,さらにはがん治療用ウイルスといった治療法の開発も進められている.今後は治療法の開発とともに,バイオマーカーの研究も進められることで,症例ごとに効果や有害事象を予測して治療法を選択していける状況に進むのではないかと思われる.また,がん細胞は単一ではなくheterogenousな細胞集団である.ひとつの治療法ではなく,複数の治療法を組み合わせた複合的な治療法の開発が重要であろう.