カレントテラピー 34-4 サンプル page 22/30
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カレントテラピー 34-4 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.4 59371Ⅰ はじめに近年の分子生物学や免疫学の発展により,がんの発生・増殖や免疫逃避に関わる分子の解明が進み,これらを標的とした新薬の開発が急速に進められた.ここ数年で,BRAF阻害剤やMEK阻害剤などの分子標的薬,抗PD- 1抗体や抗CTLA- 4抗体などの免疫チェックポイント阻害剤といった新薬が相次いで承認された.これらの薬剤は,進行例に対する生命予後の改善効果を単剤で証明し,現在では新薬間の優劣を検証する臨床試験や,新薬同士の併用効果を検証する臨床試験の結果も報告されている.Ⅱ 進行期悪性黒色腫を対象とした新薬の承認状況米国食品医薬品局(FDA) では,2011 年に抗CTLA - 4抗体であるイピリムマブとBRAF阻害剤であるベムラフェニブ,2013年にBRAF阻害剤であるdabrafenibとMEK阻害剤であるtrametinib,2014年にdabrafenibとtrametinibの併用療法,抗PD- 1抗体であるpembrolizumabやニボルマブ,2015年に腫瘍溶解性ウイルス製剤のtalimogene laherparepvec(T -VEC)を承認している.わが国では,2014年にニボルマブとベムラフェニブ,2015年にイピリムマブが承認された.Ⅲ 分子標的薬1 悪性黒色腫における遺伝子変異悪性黒色腫全体では,BRAF変異が最も多く45~50%程度1),NRAS変異が25~30%程度2),KIT変異が5%程度に認められる.日本人に多い末端黒子型や粘膜原発の悪性黒色腫では,KIT変異の頻度が高く20%程度,NRAS変異が15%程度,BRAF変異が10%程度に認められる3).2 BRAF阻害剤BRAF阻害剤では,ダカルバジン(DTIC)をはじめ* 国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科メラノーマ─ 基礎から最新薬物療法まで薬物療法全般並川健二郎*近年の悪性黒色腫に対するがん薬物療法の発展は目覚ましく,ここ数年で多くの新薬が承認された.新薬の中心は,抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体などの免疫チェックポイント阻害剤およびBRAF阻害剤やMEK阻害剤などの分子標的薬である.これらの薬剤は,進行例に対する生命予後の改善効果を単剤で証明し,現在では新薬間の優劣を検証する臨床試験や,新薬同士の併用効果を検証する臨床試験の結果も報告されている.本稿では,これらの悪性黒色腫に対する薬物療法の進歩について概説する.