カレントテラピー 34-4 サンプル page 19/30
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カレントテラピー 34-4 サンプル
40 Current Therapy 2016 Vol.34 No.4352には,腫瘍辺縁を確定することは容易ではない.まして,腫瘍細胞が個在性に増殖している場合には,肉眼はもとより通常の病理組織検査でも,その存在をとらえることは容易ではない.実際,メラノーマのなかでも末端黒子型(acral lentigenous melanoma:ALM)では,肉眼的腫瘍辺縁より外方の表皮内に免疫染色を含む病理組織学的検査ではとらえることのできない腫瘍細胞(field cell)が存在し,局所再発に関与すると推測されている5).このため,水平増殖期においてもある程度の切除マージンを設定する必要があることとなる.②,③の細胞が残存した場合には,局所再発のみならず転移を生じ得るため,生命予後に直接的に悪影響を及ぼす可能性が生じる.さらに,tumor thicknessが1mmから4mmの場合には,局所再発が生じると予後が悪化する6)との報告もあることから,より良い予後を得るためには,腫瘍浸潤の深さ(TT)に応じた適正な範囲での切除がきわめて重要である.Ⅳ 切除範囲の設定前述したように,William Handleyの提唱3)以来1990年代までは,下床の筋膜までを含めた広範囲での切除が常識とされてきた.しかし現代では,多くの科学的データに基づいて,腫瘍のTTに応じた切除範囲設定が提唱され,各国の診療ガイドラインに取り入れられている.それらにおける切除範囲は,表皮内病変では3~5 mm程度,厚さ1~2 mmでは1cm,それ以上の厚みでは2cmに設定されていることが多い.以前はより大きな切除範囲を推奨しているガイドラインもあったが,TTが4 mmを超える場合には,治療の如何にかかわらず遠隔転移を生じることが多いとされるため,現在では厚いメラノーマに対しても2cm以上の切除範囲は推奨されなくなってきている.また深部の切除範囲は,表皮内病変では脂肪織浅層までの,それ以上の厚みのある場合には固有筋膜上までの切除で良いとされている7).わが国のガイドライン4)も,これらに準じた切除範囲が設定されている(表).しかしながら,これらの基となったデータは海外において収集されたものであり,対象患者はコーカソイド(caucasoid)いわゆる白色人種が主体である.このため,集積された症例の多くを表在拡大型(superficial spreading melanoma:SSM)や悪性黒子型(lentigo maligna melanoma:LMM)といった臨床病型が占め,発生部位も顔面を主とする頭頸部や躯幹,四肢近位部が主体であり,わが国におけるa:ALMの切除後再発例b:ALMに対する切除範囲の設定例図 ALMにおける再発と切除範囲設定の実際例a:植皮片(白矢印で囲まれた部分)の辺縁より色素斑が再発(黄色矢尻)し,一部には植皮片内へ拡大している部分(青矢印)をみとめる.b:ALMの色素斑からは0.5~1cm,腫瘍の厚みがあると思われる部分からは1~2cmの切除範囲(赤両端矢印)で作図した.周囲に生理的色素沈着斑(青矢印)を認める