カレントテラピー 34-4 サンプル

カレントテラピー 34-4 サンプル page 18/30

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-4 サンプル の電子ブックに掲載されている18ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-4 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.4 39351膚を含めた広範切除が局所再発を防ぐのに有用である』と主張した2).これ以後はNorrisのコンセプトを基にして,腫瘍切除術とリンパ節切除(いわゆる予防的リンパ節廓清術)が行われるようになっていった.1907年にはWilliam Handleyが,1例のメラノーマ症例の経験を基に,2インチ(5cm)の切除範囲で筋膜まで切除し,リンパ組織の切除(いわゆる予防的リンパ廓清)を加える治療方針を提唱した3).彼のこの方針に基づいた4~5cmの切除範囲で下床の筋膜まで含めて切除する方法が,1990年ごろまではメラノーマに対する外科的治療の絶対的基本とされてきた.この時代に提唱されていた切除範囲に関する指針は,当然ながら単一ないしは少数の症例経験から導き出されたものであり,明確な科学的根拠に基づくものではなかった.しかし近年では,後ろ向きの症例集積結果のみならず前向きの臨床試験の結果を含めた科学的エビデンスに基づいて,切除範囲の設定を含むメラノーマ診療ガイドラインの策定が進められるようになった.当初は国ごとに内容のばらつきが見られたが,近年では,米国を中心とする各国の主要な腫瘍がんセンター同盟団体であるNationalComprehensive Cancer Network(NCCN)や,欧州臨床腫瘍学会(European Society for MedicalOncology:ESMO)によるガイドラインのように,諸国横断的な国際的ガイドライン作成による標準治療の確率と治療水準の均てん化が図られるようになり,内容も同じような基準に落ち着いてきている.わが国でも,日本皮膚科学会による皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインの一部として,悪性黒色腫の診療ガイドラインが2007年に初めて策定され,すでに1度の改訂4)を経て広く用いられるようになっている(表).Ⅲ なぜsurgical marginが必要なのか悪性黒色腫の多くは表皮真皮境界部の表皮内に生じ,結節型などの一部の例外を除けば,当初は表皮内を水平方向へ増殖・伸展する.この時期(水平増殖期)は比較的長期間に及ぶ場合もあるが,やがては基底膜を破って真皮方向へ浸潤増殖していく垂直増殖期に至り,容易に所属リンパ節や時には遠隔臓器に転移を生じることとなる.悪性黒色腫の局所再発には,切除創の断端から外方に生じるものと,切除部の下床から生じるものが存在する.前者の発生母地としては,①切除断端の表皮内に残存した腫瘍細胞,②真皮内や皮下へ浸潤増殖する腫瘍細胞,③真皮以下の脈管内に浸潤し周囲へ拡散した腫瘍細胞の3種から,後者は②,③によって生じると考えられる.①による切除断端での再発(図a, b)では,脈管の存在しない表皮内より再発が生じることから,この時期に発見して再切除さえできれば,生命予後にほとんど影響しないはずである.この水平増殖期の腫瘍細胞は,色素産生を伴いながら表皮内を水平方向に増殖するため,通常は肉眼あるいはダーモスコピー検査で色素斑としてとらえることが可能である.しかし,腫瘍細胞が色素産生に乏しいかそれを欠く場合T分類, Breslow thicknessTis, in situT1,1.0mmT2,1.01~2.0mmT3,2.01~4.0mmT4,組織>4.0mm制定・更新年米国(NCCN) 2016 0.5~1.0cm 1.0cm 1.0~2.0cm 2.0cmカナダ(CCO) 2013 0.5cm 1.0cm 1.0~2.0cm 2.0cm豪州(ACN) 2008 0.5cm 1.0cm 1.0~2.0cm 2.0cm欧州(ESMO) 2015 0.5cm 1.0cm 2.0cm英国(BAD) 2010 0.5cm 1.0cm 1.0~2.0cm 2.0~3.0cm 3.0cm日本(JDA) 2015 0.3~0.5cm 1.0cm 1.0~2.0cm 2.0cmNCCN:National Comprehensive Cancer Network, ESMO:European Society for Medical Oncology,CCO:Cancer Care Ontario, ACN:Australian Cancer Network,BAD:British Association of Dermatology, JDA:Japanese Association of Dermatology表主なメラノーマ診療ガイドラインにおける腫瘍切除範囲