カレントテラピー 34-3 サンプル page 8/32
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カレントテラピー 34-3 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.3 11認知症全般に関する質問217にADの発症リスクを低下させるという報告がわずかながら散見される.しかし,食文化の異なるわが国に海外の食生活を持ち込むことは容易ではない.そこで1988年に久山町の住民健診と食事調査を受けた認知症のない60~79歳の住民1,006人を17年間追跡した成績を用いて,わが国の地域高齢住民における食事パターンと認知症発症の関係について検討した7).追跡開始時の食事調査において,これまでに認知症発症との関連が報告された栄養素と関連する食事パターンを縮小ランク回帰法により検討すると,大豆・大豆製品,緑黄色野菜,淡色野菜,海藻類,牛乳・乳製品の摂取量が多く,米の摂取量が少ないという食事パターンが抽出された(表2).この食事パターンには,果物・果物ジュース,芋類,魚の摂取量が多く,酒の摂取量が少ないという傾向もみられた.次にこの食事パターンをスコア化し,追跡調査において食事パターンスコアと認知症発症との関係を多変量解析で他の危険因子を調整して検討した.その結果,この食事パターンの傾向が強い群ほど全認知症の発症リスクが有意に低下した(図4).この関連はADおよびVaDの病型別にみても認められた.減らすとよい食品となった米を単品でみると,その摂取量と認知症発症との間に明らかな関連は認めなかった.一定の摂取カロリーのなかで主食(米)の摂取量が多いほどビタミンやミネラルなど予防効果がある他の食品(おかず)の摂取量が減ってしまい,栄養のバランスが崩れてしまうので,米(ごはん)の摂0.25 0.5 1.0 2.0相対危険(95%信頼区間)Hisayama Study, 日本Honolulu-Asia AgingStudy, 米国Canadian Study ofHealth and Aging, カナダCardiovascular HealthCognition Study, 米国Conselice Study ofBrain Aging, イタリア8282,2574,6153,375749男女男男女男女男女65-71-9365-65-65-7年7年5年平均5.4年平均3.9年0.81(0.42-1.57)0.45(0.19-1.06)0.69(0.40-1.19)0.85(0.65-1.13)0.25(0.11-0.57)0.62(0.42-0.92)対象集団,国対象者数性年齢(歳)追跡年数図3運動が血管性認知症発症に及ぼす影響,メタアナリシス〔参考文献6)より引用改変〕表2 認知症予防のための食事パターン増やす食品減らす食品大豆・大豆製品米緑黄色野菜酒淡色野菜海藻類牛乳・乳製品果物・果物ジュース芋類魚卵〔参考文献7)より引用改変〕ハザード比食事パターンスコアレベル1.00.501.0(基準)0.850.720.66(n)(251)Q1(小)(252)Q2(251)Q4(大)(252)Q3p<0.05 vs. Q1傾向性p<0.05*††*図4 食事パターンスコアレベル別にみた全認知症発症のハザード比久山町男女1,006人,60-79歳,1988-2005年,多変量調整.調整因子:年齢,性,学歴,糖尿病,高血圧,血清総コレステロール,脳卒中既往歴,BMI,喫煙,運動,総エネルギー摂取量.〔参考文献7)より引用改変〕