カレントテラピー 34-3 サンプル

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86 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3292認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)について厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室長 水谷忠由わが国では,認知症の人は2012年で約462万人と推計され,軽度認知障害(mild cognitiveimpairment:MCI)と推計される約400万人と合わせると,65歳以上高齢者の約4人に1人が認知症の人,またはその予備群である.また,2025年に認知症の人は約700万人前後になり,65歳以上高齢者に対する割合は約7人に1人から5人に1人に上昇する見込みである.認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らせる社会の構築は,今や世界共通の課題であり,2013年12月に英国で開催された「G 8認知症サミット」を受けて,2014年11月にはわが国で後継イベントが開催された.ここで内閣総理大臣から「我が国の認知症施策を加速するための新たな戦略を策定するよう」厚生労働大臣に対して指示があり,これを受けて2015年1月に策定されたのが,認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)である.総合戦略における3つの基本的考え方の一つ目は,「早期診断・早期対応とともに,医療・介護サービスが有機的に連携し,認知症の容態に応じて切れ目なく提供できる循環型のシステムを構築すること」である.総合戦略には,早期診断・早期対応のためのかかりつけ医の認知症対応力向上,かかりつけ医の認知症診断等に関する相談役等の役割を担う認知症サポート医の養成,認知症の鑑別診断等を行う認知症疾患医療センター等の整備,医療・介護の専門職が認知症が疑われる人やその家族を訪問し,観察・評価を行って適切な支援につなげていく認知症初期集中支援チームの設置等が盛り込まれている.二つ目は,「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて,省庁横断的な総合的な戦略とすること」である.三つ目は,「認知症の人本人やその家族の視点に立った施策を推進すること」である.これまでの認知症施策は,ともすれば,認知症の人を支える側の視点に偏りがちであったとの観点から,認知症の人やその家族の視点を重視した取り組みを進めていくという趣旨である.総合戦略はいわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年を目指し,認知症の人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現すべく,厚生労働省を含む関係12省庁が共同して策定したもので,以下の7つの柱から構成されている.① 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進② 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供③若年性認知症施策の強化④認知症の人の介護者への支援⑤ 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進⑥ 認知症の予防法,診断法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進⑦認知症の人やその家族の視点の重視認知症の早期発見と予防・治療─ 認知症500万人時代に求められるもの